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竹林軒出張所

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『風雲児たち 蘭学革命篇』(ドラマ)

風雲児たち 蘭学革命(れぼりゅうし)篇(2017年・NHK)
演出:吉川邦夫
原作:みなもと太郎
脚本:三谷幸喜
音楽:荻野清子
出演:片岡愛之助、新納慎也、村上新悟、迫田孝也、岸井ゆきの、長野里美、山本耕史、草刈正雄

『解体新書』事始め

『風雲児たち 蘭学革命篇』(ドラマ)_b0189364_18260557.jpg みなもと太郎のマンガ『風雲児たち〜蘭学革命篇〜』が原作のドラマ。
 みなもと太郎の原作自体が、おそらく杉田玄白の『蘭学事始』を下敷きにしていると考えられ、そのためか同じようなストーリーが他の小説でも取り上げられていて、ストーリー自体はそれほど奇抜なものではない。にしても『解体新書』が作られるまでの話は非常に面白い題材で、前野良沢と杉田玄白との関わり合いなどはまことに話になる素材である。みなもと太郎はギャグマンガの人で、マンガのタッチもそういうものであるが、このドラマについてはギャグマンガみたいな騒々しさはなく、割合普通のドラマになっている。脚本は三谷幸喜だが、オーソドックスな作りで、三谷節みたいなものも出てこない。したがって題材自体をじっくり楽しめるようになっている。このあたりはポイントが高い。
『風雲児たち 蘭学革命篇』(ドラマ)_b0189364_18261079.jpg ただし、途中、杉田玄白がヤクザ野郎たちに襲われ、どこからともなく現れた林子平(『海国兵談』の著者)がそれを助けるみたいなシーンがあったが、話の流れにまったく関係なく、言ってみれば無意味なシーンであり、なぜこのようなシーンを入れたのか見当が付かない。また、工藤平助(『赤蝦夷風説考』の著者)が主人公たちに絡んでくるのもまったく必然性がなく、高山彦九郎(寛政の三奇人の一人)についても同様。ただし高山彦九郎の存在はドラマと直接関わりがなかったため、遊びのシーンになっていて、アクセントとしてそれなりに良い味があった。また平賀源内(山本耕史)と田沼意次(草刈正雄)の存在はなかなか異色で、従来の歴史観とは若干違うが面白いキャラクターになっている。草刈正雄は、少し前に放送された『幕末グルメ ブシメシ!』と同じような役回りで、その辺を意識したキャスティングだったのかも知れない。
 ドラマは割合平凡であったが、ストーリー自体が非常に興味深い内容で、前野良沢の偉業がよくわかる上、江戸の蘭学事情についても知ることができる。『蘭学事始』を読んでみたくなった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『蘭学事始(本)』
竹林軒出張所『幕末グルメ ブシメシ!(1)〜(6)(ドラマ)』
竹林軒出張所『天地明察 (上)(下)(本)』
竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (1)(ドラマ)』
竹林軒出張所『鎌倉殿の13人 (2)〜(48)(ドラマ)』
竹林軒出張所『王様のレストラン(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-01-30 07:25 | ドラマ
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