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竹林軒出張所

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『果し合い』(ドラマ)

果し合い(2015年・時代劇専門チャンネル、スカパー!、松竹)
監督:杉田成道
原作:藤沢周平
脚本:小林政広
音楽:加古隆
出演:仲代達矢、桜庭ななみ、徳永えり、進藤健太郎、柳下大、高橋龍輝、益岡徹、原田美枝子、小倉一郎

時代考証が行われていないせいか
ストーリー自体が嘘っぽい


『果し合い』(ドラマ)_b0189364_20221870.jpg 部屋住み(分家、独立できず親や兄の家に留まっている武士の子弟)の身分で、身内から邪魔者扱いされている庄司左之助(仲代達矢)が、甥の娘(桜庭ななみ)の危機に立ち上がるというドラマ。元々CS放送のために作られたものらしい。このくらいの規模のドラマを作る媒体が地上波テレビ以外にも出てきているのは喜ばしいことで、しかも海外でそれなりの評価を受けたというんだから、今後こういった製作パターンが増えるのではないかと期待できる。
 ただし内容は少々荒唐無稽で、時代考証をやっていないんじゃないかと感じてしまう。もっとも全盛時の地上波時代劇にしても時代考証は無茶苦茶だったんでこれで良いという見方もできるが、この作品については武家社会の矛盾みたいなものを描いているわけで、そのあたりがデタラメだともうストーリー自体が台無しになってしまう。
 いろいろな事物の扱いがことごとく現代的な発想なのが特に気になる。「駆け落ちするしかないだろう」などという庄司左之助のセリフが出てくるが、現代でも江戸でも(あるいはどんな社会でも)そんなことでは済まないだろと思ってしまうんだが如何。
 演出についても、『水戸黄門』風の「旅立つときに心から感謝してお辞儀する」という安直なシーンが出てきたりして、全体的にかなりありきたりである。また音楽も随所にグリーンスリーブスが使われていたりして、安直な感じが否めない。音楽から構成やストーリー、演出まで、何もかもが安直な感じが漂うんだが、それは「映画」でなく「ドラマ」であることを考えるとしようがないことなのか。もう少し力を入れて作っても良いんじゃないかと感じる。
 藤沢周平原作の多くの映画では、割合社会の背景がしっかり描かれていて、時代考証が気になるものが比較的少ないのだが、この映画に限ってはかなりデタラメさを感じた。製作段階で大幅に手が加えられたのか原作がそうだったのかわからないが、そういう点がかなり気になったので、ここで表明した。ただ先ほども言ったようにいろいろなところでドラマや映画が作られるのは歓迎である。今後もこういった方向で取り組んでいただけることを期待する。
New York Festivals World's Best TV & Films 2017 Drama Special部門金賞受賞
★★★

参考:
竹林軒出張所『たそがれ清兵衛(映画)』
竹林軒出張所『武士の一分(映画)』
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『釣忍(ドラマ)』
竹林軒出張所『樅ノ木は残った 乱心(ドラマ)』
竹林軒出張所『闇の歯車(ドラマ)』

by chikurinken | 2018-01-11 07:21 | ドラマ
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