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竹林軒出張所

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『地獄変』(映画)

地獄変(1969年・東宝)
監督:豊田四郎
原作:芥川龍之介
脚本:八住利雄
音楽:芥川也寸志
出演:中村錦之助、仲代達矢、内藤洋子、大出俊、下川辰平、内田喜郎

文芸作品を映画化することの意味について考えたい

『地獄変』(映画)_b0189364_18284478.jpg 芥川龍之介の『地獄変』を映画化したもの。
 原作に必ずしも忠実ではなく、あちこちに改変が加えられており、総じて現代的な解釈である。たとえば、大殿様(藤原道長がモデルのようだ)の元に側室として引き取られた女(主人公の絵師の娘)の元許嫁が、盗賊団に入って大殿の屋敷を襲うみたいなプロットがあるんだが、明らかに作りすぎであり、映画にしたからといってこういったエピソードが本当に必要だったのかというような疑問が残る。そういうような余計な部分がそこここに見受けられ、そういうことを考え合わせると、あまり良い映画化とは言えない。
 もっとも、この映画で展開される大殿、中村錦之助と絵師・良秀、仲代達矢の数々の激突は、両者の名演技のために、なかなかの見物になっている。中村錦之助と仲代達矢は、仲代達矢の話によると、酒の席でときどき芸論から大げんかになったような(親しい)関係らしく、両者の演技にその種類の親密感と迫力は感じられた。ただし、映画自体のテンポがあまり良くないせいもあって全体的にまだるっこしく、目が離せなくなるような展開は少ない。そのため面白さを感じる部分はあまりなかった。
 原作自体短編であることだし、この映画を見るなら原作を読んだ方が良いというのが僕の結論である。もっとも日本版のDVDは出ていないんで見る機会自体少ないだろうが。
★★★

参考:
竹林軒出張所『地獄変・邪宗門・好色・藪の中(本)』
竹林軒出張所『役者なんかおやめなさい(本)』
竹林軒出張所『仲代達矢が語る 日本映画黄金時代(本)』
竹林軒出張所『コミックストーリー 日本霊異記(本)』

by chikurinken | 2017-11-23 07:28 | 映画
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