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竹林軒出張所

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『スターウォーズ レーガンのハッタリ』(ドキュメンタリー)

スターウォーズ レーガンのハッタリ(2016年・仏Sunset Presse)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

無能な指導者のハッタリは
予想以上にうまく機能した


『スターウォーズ レーガンのハッタリ』(ドキュメンタリー)_b0189364_19023930.jpg 1980年にアメリカ大統領になったロナルド・レーガンは、徹底した反共主義者だったこともあり、ソ連を倒し強いアメリカを取り戻すことを政策の中心に置いていた。
 そのレーガン政権が1983年にぶち上げたのが戦略防衛構想(SDI)、俗に言うスターウォーズ計画である。これは大陸間弾道弾を宇宙空間でことごとく撃墜するというシステムで、これが実現すると、ソ連の核攻撃を無力化することができるという話だった。当時冷戦状態は続いており、核の均衡により平和が保たれていたため、これが実現した暁には、ソ連は一方的にアメリカの核攻撃の危機にさらされることになる。ソ連側も、現実的には不可能と疑いながらもそれに対する対策を行わなければならなくなる。国家予算の40%にまで達していた防衛費はますますかさむことになる。
 一方でレーガン政権はサウジアラビアと蜜月関係を築きあげ、原油を大量に市場に流すことで原油価格を大幅に引き下げることに成功する。これにより、ソ連の数少ない外貨獲得手段だった石油は、価格が暴落しソ連の収益も激減。これがソ連経済に致命的な打撃を与えた。
 さらにアフガニスタンに侵攻していたソ連に揺さぶりをかけるため、反ソ・ゲリラ勢力(イスラム原理主義勢力を含む)に莫大な支援を与えることで、間接的にソ連の経済を揺さぶるということも行っている。この3つの条件がソ連の崩壊に繋がったとするのが、このドキュメンタリーの主旨である。なおこの番組では、SDIについてはまったくのホラだったとしている。
 確かにこういったことがソ連崩壊の原因になったとは思うが、レーガンが意図的にやったかどうかは怪しいところで、もし意図的にやっていたとしたら(このドキュメンタリーでも否定的に扱っているが)これはレーガン政権の外交的な成果ということになる。ただレーガンにそれだけの能力があったとも思えず、あくまでも結果論だと僕などは考える。歴史が誰かの意図通り進んでいくなどということはあまりないものである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史 (8)〜(10)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第4集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『インサイド・ジョブ(映画)』

by chikurinken | 2017-10-20 07:02 | ドキュメンタリー
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