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竹林軒出張所

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『平安京はいらなかった 古代の夢を喰らう中世』(本)

b0189364_08495275.jpg平安京はいらなかった
古代の夢を喰らう中世

桃崎有一郎著
吉川弘文館

歴史の虚像と実像

 京都の立命館大学で「京都学」を教えていた著者が、京都を離れるに当たって、その成果を「卒業論文」としてまとめたのがこの本。参考文献などにも詳細に言及しており、学術論文のようなたたずまいである。
 平安京は、元々外交儀礼のために(つまり諸外国に対する見栄で)作られており、行政機能を遂行する上で必要である以上の大きさと規模を持っていたため、結局初期のプラン通り完成することはなく、後にはその領域の多くが本来の役割で使われなくなっていったというのが本書の内容。実際、現在の京都の市街域は旧「左京」に著しく偏っており、現在の京都御所も、かつての内裏の位置とはまったく違っていて、かなり「左京」よりである。そのあたりのいきさつも、背景の政治史と交えながら詳細に説明されており、大変わかりやすい。内容はかなり専門的だが、説明が丁寧であるため、わかりにくいということはない。ある程度の日本史の知識があれば十分楽しめる。また、おそらく平安研究者の間では常識であると考えられる位階制度(正一位から従初位下まで)の詳細や平安京の基本構造である条坊制などについても非常に丁寧に説明されているのも好感が持てる。この時代の歴史や文学に興味があれば、かなり食いついてしまう内容ではないかと思う。大内裏の門の名前の由来(119ページ)や、朱雀大路が畑として使われていたという話も興味深い。またわかりやすい図版が多用されており、しかもその言及箇所も正確で、しっかり作られた本であることがわかる。校正もきっちり行われているようで本としての完成度も高い。本を出すならこのくらいのレベルのものを出してほしいものである。良い本だ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『京都御所 〜秘められた千年の美〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『丸竹夷にない小路(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『京都 冷泉家の八百年(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『六国史 ― 日本書紀に始まる古代の「正史」(本)』
竹林軒出張所『日本の歴史をよみなおす (全)(本)』

by chikurinken | 2017-09-23 08:51 |
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