女が階段を上る時(1960年・東宝)
監督:成瀬巳喜男
脚本:菊島隆三
撮影:玉井正夫
音楽:黛敏郎
出演:高峰秀子、森雅之、団令子、仲代達矢、加東大介、中村鴈治郎、小沢栄太郎、淡路恵子
仕事や起業についていろいろ考えた
そういうテーマの映画かどうかはわからないが
これも、
『浮雲』同様、ミキちゃんデコちゃん(成瀬巳喜男と高峰秀子のこと)コンビの映画で、しかも森雅之に加東大介まで出ている。ただ内容は『浮雲』とは大分違って、主人公は銀座のバーの雇われママで、その生き様が描かれる。
前半は、雇われママの仕事ぶりが中心で、成瀬巳喜男は一体この映画で何を描きたいのかなどとつらつら考えていたが、後半になって話が進み始め、作り手の主張がしっかり伝わってくる上々のドラマに仕上がっていた。菊島隆三のオリジナル脚本のようだが、菊島隆三本人がプロデューサーまでやっているところを見ると、脚本家にとってそれなりの自信作だったかと思う。実際よくできたシナリオである。
何とか銀座で生き残っていこうとする美人ママと、サポートを申し出る金持ちたちの群像劇、と言ってしまえばそういう話なんだが、どこか花街の世界を思わせる話で、見ていて
『祇園囃子』を連想したが、そういうのが製作者の狙いでもあるのではないかと思う。菊島の身近にモデルがいたのか(たぶんいたんだろう)よくわからないが、2時間のドラマとしてきっちりまとめ上げられていて、インパクトも残すのは、やはり脚本家、そして監督、さらにはキャストの技量だろう。
音楽はビブラフォンを使ったジャジーなもので、担当は黛敏郎。基本的に黛敏郎の音楽は好きではないが、この映画については非常に良い味を出していた。絵作りもきれいで、コントラストが効いたモノクロ映像が美しい。地味な作品ではあるが、佳作である。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『わたしの渡世日記 (上)(本)』竹林軒出張所『流れる(映画)』竹林軒出張所『祇園囃子(映画)』竹林軒出張所『浮雲(映画)』竹林軒出張所『稲妻(映画)』竹林軒出張所『乱れる(映画)』竹林軒出張所『放浪記(映画)』竹林軒出張所『あらくれ(映画)』竹林軒出張所『夜の蝶(映画)』