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竹林軒出張所

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『成功する人は偶然を味方にする』(本)

成功する人は偶然を味方にする 運と成功の経済学
ロバート・H・フランク著、月沢李歌子訳
日本経済新聞出版社

運良く得られた金は
運を与えてくれた社会に還元すべきである


『成功する人は偶然を味方にする』(本)_b0189364_20555576.jpg タイトルが示す通り、「成功者」と言われる人は運が良かっただけであるということを示す本。もちろん成功者が、才能があり努力をしてきたのは確かかも知れないが、同じだけ才能があって同じように努力した人が必ずしも社会的に成功しているとは限らない。これは『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する』の主張と同じで、取り立てて珍しい主張ではない。
 この本の目玉は、だから富豪からはしっかり税金をとるべきという主張であり、そのための具体的な方策が示されている点である。具体的な方策とは「累進消費税」というもので、消費額に対して累進的な税金をかけるというものである。著者によると、これを実現すれば無駄に高騰した世の中の贅沢品が適正な料金レベルに落ち着く上、現在なおざりになっている公共事業にも金が回るようになり、しかも投資が増えるらしい。この程度の改革でそううまく行くのかははなはだ疑問だが、ましかし(たまたま運が良かっただけの)金持ちからしっかり税金をとらない今みたいな一人勝ちシステムがいつまでも続くとは思えない。彼らからしっかり累進税をとるための理論的根拠にはなりそうな本である。
 惜しむらくは翻訳で、誤訳ではないかと思える意味不明の箇所が数カ所あった。もしかしたら誤訳ではないかも知れないが、少なくとも一度読んで頭にスーッと入るような文章ではなく、何度か読んだが結局意味不明という箇所が散見される。同じ箇所を何度も読まされる(しかもそれでもわからない)のはあまり気持ちの良いものではない。内容が単純で簡潔なんだから、もう少し読みやすい文章を心がけていただきたいと思う。
★★★

参考:
竹林軒出張所『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する(本)』
竹林軒出張所『天才! 成功する人々の法則(本)』
竹林軒出張所『パーク・アベニュー 格差社会アメリカ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『"新富裕層" vs. 国家 〜富をめぐる攻防〜(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『EU 租税回避1兆ユーロとの闘い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『銃・病原菌・鉄 (上)(本)』

by chikurinken | 2017-08-26 06:55 |
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