プーチンの道 〜その権力の秘密に迫る〜
(2015年・米WGBH)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
怪物プーチンの来し方、行く末
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がどのように成り上がって、どのような方法で政治を行っているかを紹介、というか告発するドキュメンタリー。
KGBの職員だったプーチンは、ソビエト連邦崩壊により職を失うが、サンクトペテルブルクで懇意のサプチャーク市長に拾われ、市長が直接手を下せない汚い仕事を引き受けることで頭角を現していく。その後、サプチャークの中央政界進出に伴いプーチンも中央政界に進出。エリツィン大統領の汚い仕事の処理を引き受けたことから、エリツィンにも可愛がられる。
エリツィンが大統領を退任するにあたり、大統領時代の自身の犯罪行為を追求しない後継大統領としてプーチンを指名するに及んで、プーチン時代が始まる。その後首相に就任したプーチンは、世間的にも認知度が低かったが、ロシア高層アパート連続爆破事件の際にチェチェンの過激派による仕業と決めつけ、チェチェンに対して攻撃を強行したあたりから保守層を中心に支持を集めるようになる。
このドキュメンタリーでは、この連続爆破事件はFSB(KGBの後継組織)の自作自演で、プーチンが知名度を上げるために仕掛けたものと断定していたが、真相はわからないにしてもかなり怪しいのは確かである。しかもそれを告発した記者や元職員が不当逮捕されたり謎の死を遂げたりしているという事実もある。少なくともこの連続爆破事件とチェチェン紛争で結果的に一番得をしたのは、その後大統領選挙を勝ち抜いたプーチンであるのは確かである。しかも連続爆破事件についての調査も打ち切りにしているなど、怪しさ満載である。
このドキュメンタリーで描かれるプーチンは、利己主義的な第三世界型の独裁者で、先進国の指導者では断じてない。もっとも先進国とされている米国でも似たようなサイコパスが大統領になっているわけで、先進国の指導者が民主的な存在かというと必ずしもそうではないところが悩ましいところである。米ロの首脳、それから我が国の首相も含め、互いに親近感を感じているように聞くが、そういうのもなんだかわかるような気がする。
インパクトメディア歴史アーカイブ映像部門インパクト賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『プーチン 戦争への道(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンと西側諸国(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンと西側諸国 (4)〜(5)(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『オリバー・ストーンONプーチン(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ワグネル 影のロシア傭兵部隊(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチン政権と闘う女性たち(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『混沌のウクライナ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ウクライナ侵攻が変える世界(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『暴かれる王国 サウジアラビア(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンが恐れた男(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンの陰で(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『知られざるガス戦略(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『未承認国家(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『プーチンの“オオカミ”たち(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『KGBの刺客を追え(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ゴルバチョフの警告(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『こうしてソ連邦は崩壊した(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『スターリンの亡霊(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ドーピング 暴かれた実態(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『戦時下の大統領 ゼレンスキー(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『軍事侵攻・緊迫の72時間(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『潜入 ベラルーシ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『バシャール・アサド 独裁と冷血の処世術(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『メルケルが残したもの(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『カラーで見る 独裁者スターリン(ドキュメンタリー)』