“強欲時代”のスーパースター 〜ドナルド・トランプ 1980s-1990s〜
(1991年・米The Press and the Public Project)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
史上最悪の大統領の行状
アメリカ大統領にまで上り詰めたドナルド・トランプが、若い頃、どのようにしてのし上がったかを描いた1990年のドキュメンタリー。
80年代は、その毒舌と自信でマスコミから盛んに取り上げられていたが、80年代の終わり頃になると、トランプの法律違反や悪辣な手法が明るみにあり、しかもデリバティブを地で行くような詐欺的な取引まで明らかになっていき、マスコミの扱いも冷ややかになっていく。詐欺的で無理な経営手法のせいで破産も間近……そういった折(1991年)に作られたのがこのドキュメンタリーである。この後いったんは破産寸前まで行ったが、ロスチャイルドなどの支援のおかげで立ち直ったらしい。そのあたりは当然のことながらこのドキュメンタリーでは描かれていない。
このドキュメンタリーで紹介されるトランプの手法は、裏切り、企業乗っ取り、補助金詐取、詐欺、地上げに伴う住民への脅迫など、経済に関係するありとあらゆるあくどい所業が登場する。マフィアとの取引も噂されているとも。実際このドキュメンタリーは、トランプ側の圧力によりお蔵入りになっていたらしいが、ここに来て日の目を見ることになった。
ここに登場するドナルド・トランプという人物、とにかく人との繋がりを重視するという感覚に著しく欠けており、言ってみれば、自分さえ良ければ良い、他人は自分に奉仕する存在くらいの考え方を持っているように見受けられる。この男の言動から判断すると間違いなく反社会性人格障害(サイコパス)だろうということがわかる。なぜこのような男を最高権力者に選んだのかわからないが、こちらの国もあちらの国も愚か者を権力者に戴いている国は、国民の知性レベルが窺われるというもの。だが一方でこういった人間に武器を自由にする権限を与えておくことの危険性についてはわきまえておかなければならない。幸い今のところ、大したことを実行できていないが(この男の価値観があまりに周囲と違うため)、いずれは消えるであろうことは目に見えているが、それまでに世界の状況に致命的なダメージを与えないでくれることのみを願う。
トランプがこれまでどのような悪辣なことを重ねてきたかが紹介されているドキュメンタリーは貴重で、このドキュメンタリー自体が悪意に満ちていると見る向きもあるかも知れないが、この男の所業はそれを上回る邪悪さである。彼の法律違反を集めて法廷に出したら、終身刑になってもおかしくない。だがそういうことになったとしても決して反省するようなことはなく、周りの人間を恨むだけだろう。まさにサイコパスの本領発揮。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『華氏119(映画)』竹林軒出張所『ドナルド・トランプのおかしな世界(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『嘘と政治と民主主義(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『“黒幕”バノンの戦い(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ジェニファーは議事堂へ向かった(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『E・トッドが語るトランプショック(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『帝国以後 - アメリカ・システムの崩壊(本)』竹林軒出張所『良心をもたない人たち(本)』