“フェイクニュース”を阻止せよ(2017年・NHK)
NHK-BS1 BS1スペシャル
ネットが人の思考力を削いでいる現状
昨年のアメリカ大統領選挙で、ライバル候補者を攻撃する「フェイクニュース」(ほとんどはクリントン候補に対するものだが)が出回り、トランプ候補の躍進に拍車をかけたらしい。実際のところ、インターネットが重要なメディアになっている今、真偽が怪しいニュースは多い。中でも「フェイクニュース」については内容がデタラメで、多くは特定の個人を攻撃するための材料にしか過ぎず、確信犯的で、大衆をある一定の方向に導こうとするデマゴーグ的な意図が見える。こういったもので騙される人がどの程度いるかわからないが……というのは、そもそもこういった類のニュースを信じる人は、こういったニュースを信じたいと思っている人じゃないかと感じているためである。しかしこの種類の人々に攻撃材料を与えるという点では由々しき問題であるため、こういった「情報」が実は嘘であることを示す情報も必要になってくる。
今年フランスでも大統領選挙があり、極右勢力FN(人民戦線)の党首、ルペンが躍進するなどという現象が起こった。インターネットの普及とともに世界的に右翼が跋扈しているのはご承知の通りで、そのための推進力として、ライバルを攻撃するフェイクニュースの類が活用されるという状況が起こっているのだ。右翼連中は力を得るためには手段を選ばないというのか、あることないこと垂れ流し続ける。これも世界共通の現象である。
さて、ここからが本題だが、フランスの大手新聞社は、フェイクニュースが嘘であることを積極的に暴いて、こういった攻撃が大統領選挙の結果に影響しないよう尽力しているらしい。で、このドキュメンタリーに登場する新聞社リベラシオンは、大統領選挙を前に、フェイクを暴き、その出所を突き止めるという業務を行っていたが、最終的にその出所がアメリカであることを知る。しかもそれが、先のアメリカ大統領選挙でも大量のフェイクニュースを流したトランプに近い人物であることが判明。アメリカ大統領選挙のロシアのケースと同じように、特定の国の選挙に他国が影響を及ぼせる状況が実現しているのがネット社会の現状ということである。こうして民主主義を守ることが難しくなっていることが明らかにされる……そういうドキュメンタリーである。
なお内容は、『クローズアップ現代』で以前放送されたものと似ており、おそらく使い回しではないかと思う。使い回しだと引け目があるかも知れないが、こういった「啓蒙」番組は、地上波でも何度か放送したらどうだと感じる。大衆に周知させる価値が十分にある情報だと思う。また、世界的な右傾化の状況というのも、一度まとめてドキュメンタリーにしてほしいとも考えている。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ベリングキャット(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『NYタイムズの100日間(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『E・トッドが語るトランプショック(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ドナルド・トランプのおかしな世界(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『“強欲時代”のスーパースター D・トランプ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『“黒幕”バノンの戦い(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ソーシャルメディアの“掃除屋”たち(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『シャルリとは誰か? 人種差別と没落する西欧(本)』竹林軒出張所『ネット自動広告取引の闇(ドキュメンタリー)』