秋の駅(1993年・フジテレビ、福島テレビ)
演出:河毛俊作
脚本:山田太一
出演:田中好子、布施博、益岡徹、村田雄浩、小倉久寛、金山一彦、大森博、中原ひとみ、丹阿弥谷津子、千秋実
ストーリーの使い回しか 山田太一のドラマだが、随分小粒な印象がある。プロットも割合単純である。
田舎の駅を舞台に、嫁が来ない男たちが、ちょっとマドンナ的な女性(離婚経験はあるが)にアプローチしていくという、
『幸福駅周辺』みたいなストーリーである。もしかして山田センセイ、使い回しですかと聞きたくなるくらい、設定が似ている。また将来に絶望した老夫婦が死に場所を探すというストーリーも
『冬構え』を思わせる。そういうわけで、このドラマについてはあまり目新しさがない。もちろん、ドラマには起伏がありそれなりにうまく作られているが、山田ドラマとしては少し肩すかしを食った印象。
キャストも山田ドラマとしては比較的珍しいラインアップであるが、活躍している俳優ばかりで違和感はまったくない。また、どの役者もそつなく演技していて申し分ない。ただしキャストの方言(おそらく福島弁)が少し聞き取りづらく、セリフがわかりにくいという部分が難点であった。福島テレビの記念番組だったらしく、そのせいでリアルな福島方言をキャストに話させたのかも知れないが、聞き取れなければしようがない。そういう点も、僕にとってはマイナスポイントだった。期待が大きかっただけに失望感も大きかったが、山田ドラマらしくドラマのクオリティはそれなりに高い。
第19回放送文化基金賞優秀賞、第30回ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『幸福駅周辺・上野駅周辺(本)』竹林軒出張所『夏の故郷 -総集編-(ドラマ)』竹林軒出張所『冬構え(ドラマ)』竹林軒出張所『鳥帰る(ドラマ)』竹林軒出張所『北の夢(ドラマ) 追悼 田中好子』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』