秋の一族(1994年・NHK)
演出:深町幸男
脚本:山田太一
音楽:福井崚
出演:緒形拳、岸恵子、大鶴義丹、原田知世、川原和久、藤岡琢也、平田満
原田知世の代表作 山田太一の『一族』三部作(
『春の一族』、『秋の一族』、
『夏の一族』)の1本。3本の中では一番地味と言えるか。過去2回見ているが、内容をほとんど覚えていなかった。だが逆に何度見ても楽しめて良いとも言える。
かつてみずからの自立のために夫(緒形拳)と中学生の子どもを置いて出ていった中年女性(岸恵子)が、仕事先のシンガポールから日本に戻ってきて、彼らに再会するというところから話が始まる。このあたり2001年作の
『再会』を彷彿させる展開である。同時にその息子夫婦(大鶴義丹、原田知世)周辺に起こる事件と、元家族の関係が話の中心部分になる。結果的にいろいろなことが、傍から見ると逆説的に映ったりして、世の中ってのはわからないなというような話になる。派手さはないが、人間がよく描かれており、またとぼけた楽しい会話も散りばめられているし、何より魅力的なキャラクターたちは山田ドラマの面目躍如である。
中でも原田知世が演じる美保が、ちょっと「不思議ちゃん」であるが非常にキュートである。原田知世が素晴らしい演技をしていて、彼女の代表作と言える作品、それがこのドラマである。思えば原田知世、素材は素晴らしいのに大した映画に恵まれなかった、女優としては少々寂しい存在である。しかしこのドラマを見ると、やはり素晴らしいポテンシャルを秘めていることが分かる。また藤岡琢也、平田満らの脇役が面白い存在感を放っているのも山田ドラマならではである。派手さはあまりないが、山田太一の職人芸が存分に発揮された佳作と言える。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『春の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『夏の一族 (1)〜(3)(ドラマ)』竹林軒出張所『再会(ドラマ)』竹林軒出張所『チロルの挽歌(ドラマ)』竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『サヨナラCOLOR(映画)』