よその歌 わたしの唄(2013年・フジテレビ)
演出:田島大輔
脚本:山田太一
出演:渡瀬恒彦、いしだあゆみ、柄本明、鳳蘭、小倉一郎、瀬戸康史、キムラ緑子、中越典子、山崎樹範、阿南健治
痛ましささえ感じる山田ドラマ 退官した人類学の元大学教授(渡瀬恒彦)が、「1人カラオケ」している人たちをスカウトして合唱団を作ろうとするという話。と言っても、よくある映画みたいに、本格的な合唱団ができあがるというふうに話が進むわけではない。主人公がちょっと気まぐれでそう思ったという程度で、実際に何人かに声をかけて練習場に来てもらうんだが、全然合唱が行われる気配がないという按配。そこからストーリーが二転三転はするが、話にあまりリアリティがない上に、ドラマの進行がなんだかまどろっこしくて、全盛期の山田ドラマとは大分雰囲気が違う。エピソードもとってつけたようなものばかりで、ドラマにまったく入り込めなかった。
しかも最後の方に安っぽい回想形式が使われたりして、演出についてもかなり疑問符が付く。山田太一は演出にも結構口を出しているはずで、そのためこれまでどのドラマも一定の水準が保たれていたが、2010年代のドラマについては、脚本面でも演出面でも往年のキレがないと感じることが多い。そういう意味でもこのドラマは失望の部類に入る。少し痛ましささえ感じる。濡れ衣を着せられる大学教授というネタは、
『家へおいでよ』の使い回しか。
キャストはそれなりだが、いしだあゆみの老い方が痛ましい。彼女が歌うシーンがあるが、歌の方も「ブルーライトヨコハマ」の頃と比べるとかなり痛ましかった。
★★☆参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『家へおいでよ (1)〜(6)(ドラマ)』竹林軒出張所『キルトの家(ドラマ)』竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』