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竹林軒出張所

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『顔ニモマケズ』(本)

顔ニモマケズ
どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語

水野敬也著
文響社

いろいろ語るのが難しい本だが
要は何かを感じて…ということだと解釈する


『顔ニモマケズ』(本)_b0189364_18372151.jpg 恋愛体育教師・水野愛也こと水野敬也(竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』を参照)のインタビュー本。インタビューの対象となる人は、見た目が普通と著しく異なる9人の人たち。先天的な病気のせいで顔が著しく歪んだ男性、片目がない男性、大きなアザが顔にある男性、髪の毛をはじめとする体毛が抜けた女性など。それぞれの方々の写真も掲載している。
 かなり異形の人もいるので、最初見ると少々ギョッとしたりする。まあしかし、何度も見ているうちにだんだんと慣れていった。多少違っていても慣れてしまえばどうということはないものだなと感じた。
 顔にコンプレックスを持つ日本人は多いが、見た目がかなり異質なこの人たちはどのようなコンプレックスを抱えているのだろう、どのような差別を受けてきたのだろう、自分の中でコンプレックスをどのように処理しているのだろうなどという、通常であれば訊きにくいことを直球勝負で訊いていくのが、このインタビュー。話し手の方も率直に回答していて、それによるとどの人も、見た目が人と違うことについて前向きに捉えている。これまで結構嫌な思いもしただろうと傍目には思うが、彼らの話によると実際はそうでもないらしい。この人たち、話を聞くと、結構周りの人にも恵まれている。たとえば眼球内の腫瘍のせいで片目を失った泉川氏の場合、

 高校生のとき、ひげを伸ばしていた時期があったんですけど、電車の中で前に座った男の子がこちらを指さして隣にいる母親に言ったんです。
 「あのおじちゃん、目がないよ」
 そのとき一緒にいた友だちが爆笑しまして。「お前、おじちゃんって言われとるぞ」と。僕としても「目じゃなくてそっちかい」という気持ちになりました。
(本書59ページ)


というような経験があったらしい。
 また話し手のほぼ全員、人生が割合うまいこと行っている人で、だからこそこういう本にも登場したんだろうが、したがって悲壮感はあまりない。見た目が違っているからといっても、悩み自体はそこいらの人々と同じだと言う。
 この本の主眼は、彼らの言葉から勇気をもらって、問題を乗り越える方法を学んでくれというものであり、確かに彼らの話からいろいろ学ぶところはある。つらいことがあったら、それは乗り越えるべき試練だと捉えるなどという人もいて、人間がでかいと感じる。経験が人を大きくするんだなと改めて思った次第。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『LOVE理論(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-06-27 07:36 |
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