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竹林軒出張所

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『検事のふろしき』(ドキュメンタリー)

検事のふろしき(2009年・東海テレビ)
監督:齊藤潤一
撮影:塩屋久夫
ナレーション:宮本信子

他の東海テレビ司法番組と違って
検察官には親近感を持てなかった


b0189364_20533466.jpg 日本の裁判のあり方を問い続ける東海テレビが、今度は検察官の日常のドキュメンタリーを作った。『裁判長のお弁当』の続編みたいな位置付けのドキュメンタリーである。
 普段はその日常を一切カメラの前に曝すことがない検察官だが、おそらく2009年に裁判員制度が導入されることがきっかけで、検察庁もこういった形で広報することになったのではないかと思われる。数人の検事に密着してその仕事にスポットを当てるんだが、なぜかわからないがあまり目新しさを感じない。今まで覗いたことがないようなシーンのはずだが、どれも想定内なのか、その辺りはよくわからない。
 こういう司法ドキュメンタリーで一番物足りないのが、司法関係者の一番の仕事、つまり実際の裁判の状況が紹介されないということで、法廷内の様子がテレビで公開されることがないため仕方がないといえば仕方がないのであるが、このドキュメンタリーではなんと、ある刑事事件の法廷で検事が有罪を主張する(生々しい)シーンが出てきて、実際の検事の仕事を垣間見ることができる。実はこれは、裁判員裁判を前に全国で行われた模擬裁判の一環であり、今回の取材対象である名古屋地裁でも同様の模擬裁判が行われ、その風景が撮影されたものである。この模擬裁判、全国で同じ事案について行われたらしく、模擬裁判員の立ち会いの下、実際の司法関係者が有罪、無罪を争うというものだったらしい。ちなみにこの事案、圧倒的に証拠が不十分で、推定無罪の原則から行くと無罪になるのが当然な案件なんだが、全国の多くの裁判所で有罪判決が出ていたらしい。これはちょっと驚き。
 また、若い女性検察官が、人が殺されたんだから容疑者を有罪にしなければならないと語っていたのも少々驚き。容疑者が実際の犯人かどうかはどちらでも良いと言わんばかりの態度に幼稚さを感じたが、これが検察官の一般的な考え方なんだろうかなどと考えてしまった。もちろん検察官は容疑者を起訴するのが仕事ではあるが、日本の有罪率99.9%という恐るべき数字もあるいはこういった意識から来ているのかと感じた。
 検察官に親近感を持たせるような、一見検察の宣伝であるかのような番組ではあったが、その実、検察官の歪んだ意識みたいなものが見て取れ、そのあたりが実は東海テレビの狙いだったのではないかと、見終わった今になって感じている。検察官おそるべし。東海テレビもおそるべし。
ギャラクシー賞奨励賞受賞
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『裁判長のお弁当(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『死刑弁護人(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『罪と罰 娘を奪われた母 弟を失った兄(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『光と影 光市母子殺害事件 弁護団の300日(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ふたりの死刑囚(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『時間が止まった私(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヤクザと憲法(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『平成ジレンマ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ホームレス理事長(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『長良川ド根性(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『青空どろぼう(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2017-06-21 06:53 | ドキュメンタリー
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