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竹林軒出張所

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『ライスカレー』(1)〜(13)(ドラマ)

ライスカレー (1)〜(13)(1986年・フジテレビ)
演出:杉田成道、河毛俊作
脚本:倉本聰
音楽:宇崎竜童
出演:時任三郎、陣内孝則、中井貴一、藤谷美和子、布施博、ガッツ石松、北島三郎、風吹ジュン、室田日出男、田中邦衛、佐藤慶、三木のり平

青春、出会い、別れ

b0189364_20471328.jpg 倉本聰が『北の国から』で大ヒットを飛ばし一番名前が売れていた頃の作品。『北の国から』と同じフジテレビ作品で、フジテレビも『北の国から』に続く倉本作品ということで、カナダで8カ月間ロケを敢行するという力の入れようだった。残念ながら視聴率は奮わず、フジテレビとしては誤算だったかも知れない。しかし内容は『北の国から』に迫る、あるいは超えると言って良いほどのグレードである。再放送もあまりなかったようで、永らくDVD化されることもなく、なんでこれほどの作品を眠らせておくのか僕には皆目見当が付かなかった。僕は古本のシナリオを買ったりしたが、ともかく世間的にはずっと評価が低かったようである。そういう状況が変わったのが2011年で、DVDがとうとうフルセットで販売された。僕は速攻で入手したが、結局見ることもなく、そのまま野積み状態で今日まで至ったのだった。手に入ってしまうとすっかりそれで満足してしまって見なくなるということはよくあることである。
 放送時に見たときは非常に心に残って、先ほども言ったように倉本聰の最高傑作だと思ったほどだが、今回通しで見てみてその思いを新たにした。主役は時任三郎、陣内孝則、中井貴一で、時任三郎と中井貴一は『ふぞろいの林檎たち』の主役2人だが、まったく異なるキャラクター、まったく異なる関係性を巧みに演じている。陣内孝則はほぼドラマ初登場だが、非常に個性的な役柄を演じていて会心の演技である。初めて見たときは「これ誰?」と思ったほどの存在感。後は概ね倉本ドラマの常連が脇を固めている。北島三郎は特別出演という枠で初回と最終回のみの登場である(回想シーンでたびたび出てくるが)。
 ケン(時任)、アキラ(陣内)という2人の若者が、地元の先輩、次郎(北島)の(カナダでライスカレーの店を始めるから手伝いに来いという)大風呂敷に乗ってカナダまで行ってしまうが、その先輩が失踪していなくなっていたというのが振り出し。このケンとアキラ、高校では野球に明け暮れ英語はからっきし、コミュニケーションにも困る有様で、とりあえず次郎を探したりするが、見つからず、方々をさまようことになる。その後、いろいろな人々と出会い、そして別れを迎える。まさに青春の1ページである。出会いや別れは、彼らの地元、銚子の人々との間でも起こり、カナダ、銚子の二層構造がドラマに重厚さを与えている。
 あちこちに倉本作品らしい恥ずかしい表現も一部あるし、悪ノリのシーンも結構多いが、いろいろな細かい部分にリアリティがあり、それぞれの登場人物に魅力があって、ストーリーに無理がない。そのため、自分を登場人物と同じ境遇に置くという見方ができる。こういう点は、最近のドラマに著しく欠けている部分である。それに最近のドラマみたいにやけに人が死んだりということもない。人の死は、言うまでもなく現実世界では重いものである。ドラマの中であっても軽々しく扱ってしまうと、極端にリアリティがなくなってしまう。人の死はやはり重いものでなければならない。その辺の表現も実に良い。決して完璧なドラマではないが、(特に若い頃の)人との出会いや別れについて思いを馳せることができる作品である。見た後は、良い作品に接した後の爽快感が残る。
★★★★

追記:
 今見ると、当時の日本人のガイジン・コンプレックスが発揮されていて、見ていて痛々しい感じがする。特に時任演じるケンが、英語がわからず終始愛想笑いしているのがはなはだ痛ましい。ただし演技という視点で見れば最高である。

参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』
竹林軒出張所『君は海を見たか (1)〜(11)(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』
竹林軒出張所『駅 STATION(映画)』
竹林軒出張所『冬の華(映画)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 ひとり(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』
竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』
竹林軒出張所『前略おふくろ様 (1)〜(26)(ドラマ)』

by chikurinken | 2017-05-29 06:46 | ドラマ
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