玩具の神様 (1)〜(3)(1999年・NHK)
演出:石橋冠
脚本:倉本聰
出演:舘ひろし、中井貴一、永作博美、かたせ梨乃、小林桂樹、根津甚八、佐藤B作、美保純、きたろう、ミッキー・カーチス
面白いものが書けていた頃の倉本作品
倉本聰がシナリオを書いたNHKのドラマ。
『やすらぎの郷』同様、主人公は脚本家(二谷:舘ひろし)。視聴率競争にばかり明け暮れる昨今のテレビ・ドラマに疑問を感じ始めていて、ドラマ・シナリオを書くことも以前ほどうち込めず、そのせいか締切も遅れがち。そんなとき、ニセモノの二谷が現れ、方々で詐欺行為を働いているという情報が、本物の二谷の元に入る。同時に二谷には妻の不倫騒動まであり、シナリオが書けない二谷はそのエピソードまでドラマ化するなど、なんだかしっちゃかめっちゃかな状態。一方、ニセ二谷(中井貴一)はよろしくやっていて、しかも弟子までとっているという有様。本物の方が何となく冴えないが、このあたりは倉本聰の自虐ネタも入っているのか。そうそう、当然のことながら、この二谷は、脚本家自分が(ある程度)モデルになっている。この頃、実際にニセ倉本聰が現れ、倉本になりすまして詐欺行為を働いていたということで、そのエピソードをシナリオ化したのがこの作品なんである。

ドラマは主人公周辺、詐欺師周辺が並列で進行し、しかもそれぞれの周辺にいろいろなエピソードが盛り込まれているため、結構長いドラマではあるが、非常に面白く見ていてまったく飽きない。倉本聰もこの頃は、これだけ面白いドラマが書けていたということがわかる。しかもドラマの低レベル化を随所で嘆いていたり、視聴率至上主義のテレビ界を批判していたり、いろいろな主張も盛り込まれている。こういう部分は、ある程度時間が自由になるテレビ・ドラマだからできることで、実にドラマ的な部分とも言える。あまりにいろいろなものが盛り込まれているため、少々雑多な印象もあるが、これもテレビ的で、さほど気にならない。いかにもテレビらしい、ドラマらしいドラマと言えるかも知れない。
ただし、山田ドラマのような強烈なテーマはなく、見た後で肩すかしを喰らわされたような印象は残る。とは言え、人間の善意や信頼などが最後まで貫かれているため、見た後は気分の良さが残る。そういう点でも「良いドラマ」だと思う。
キャストはどれも非常に好演で、演出もなかなか見事に決まっている。堺雅人がエキストラ並みのチョイ役で出ていたようだ(おそらくAD役)が、はっきりとは確認できなかった。
第17回ATP賞2000優秀賞受賞
★★★☆参考:
竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』竹林軒出張所『冬のホンカン うちのホンカン-PART IV(ドラマ)』竹林軒出張所『やすらぎの郷(ドラマ)』竹林軒出張所『川は泣いている (1)〜(4)(ドラマ)』