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竹林軒出張所

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『映像の世紀プレミアム 4』(ドキュメンタリー)

映像の世紀プレミアム 第4集 英雄たちの栄光と悲劇
(2017年・NHK)
NHK-BSプレミアム

最後に残った素材を集めてみた?

『映像の世紀プレミアム 4』(ドキュメンタリー)_b0189364_21534252.jpg 『映像の世紀』スピンオフの第4弾。この第4集では、時代を彩ったヒーローを取り上げ、その時代背景もあわせて紹介する。
 取り上げられるヒーローは、(大西洋横断飛行の)リンドバーグ、(南極探検の)スコットとアムンセン、ベーブ・ルース、チェ・ゲバラ、力道山、ケネディ、モハメド・アリ。なぜこんなところに力道山を入れるか理解に苦しむ(力道山は1つの現象である)が、スコットやチェ・ゲバラの映像はかなり貴重なもので、おそらく新旧『映像の世紀』シリーズには出てこなかったものが多かったんではないかと思われる。また、リンドバーグが当時世界中でどれだけ熱狂的に迎えられたか、つまり人気者だったかも紹介されていて、非常に新鮮であった。その人気はさながら現代のロックスターなみだが、時代が下がると、米国内でナチス・ドイツの協力者というレッテルを張られたことから(実際にドイツのシンパではあったようだ)戦中戦後はバッシングを受けたなどという話も今回初めて聞いた(と思っていたが、これについては前の『映像の世紀』でも取り上げられていたようだ)。
 モハメド・アリについても、華麗なボクシングスタイルで一躍人気を得たが、その後の徴兵拒否、イスラム教への改宗で一気に世間の「朝敵」になってしまう過程は非常にスリリングである。しかしその後は、反戦活動に力を入れ、それが反ベトナム戦争の世論喚起に役立ったということを考えると、当時(僕を含め)世間一般が持っていた「ただのビッグマウスのスポーツ選手」という見方は大きく変わる。
 こうやって人物単位で時代を切り取るという方法論は、ある人間とその時代との関わり方が照らし出されるなど、面白い側面もある。特に旧『映像の世紀』で時間軸に沿った表現、新シリーズでテーマ別の表現を行った上で、この人物単位の表現方法を採用したのは、シリーズごとに異なるアプローチ方法を採用したということであり、非常に意義深いと言える。考えてみれば、このシリーズでは第1集が芸術家、第2集が科学者、第3集が女性という具合にずっと人物単位のアプローチが続いていたわけだが、時代との関わりをもっとも強く感じたのがこの第4集である。そういう意味でもこの第4集は大変魅力的な回であった。もっとも第4集は英雄(あるいは人気者)というくくりだったため、スポーツ選手、冒険家、革命家、政治家と、そのラインナップはごちゃ混ぜである。先ほども言ったように力道山がチェ・ゲバラと同格に扱われているのは疑問符が付くし、ケネディもこんなところで取り上げる必要はないんじゃないかと感じた。こういう風に雑多な分野の映像が集められると、今まで使わなかった最後の残り素材を集めてみたというのがこの第4集なのかなどと感じてしまう。ってことは『映像の世紀プレミアム』シリーズもいよいよこれで終わりってことなんだろうか。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 1(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 2(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 7(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 8(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 12(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 13(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 14(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 15(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 16(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 17(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 18(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 20(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 21(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『新・映像の世紀 第3集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『アメリカが見たカストロ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『蘇る伝説の死闘 猪木vsアリ(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(本)』

by chikurinken | 2017-04-29 06:53 | ドキュメンタリー
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