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竹林軒出張所

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2016年ベスト

 今年も恒例のベストです。例年どおり「僕が今年見た」という基準であるため、各作品が発表された年もまちまちで、他の人にとってはまったく何の意味もなさないかも知れませんが、個人的な総括ですんで、ひとつヨロシク。
(リンクはすべて過去の記事)

今年見た映画ベスト3(43本)
1. 『素晴らしき哉、人生!』
2. 『ガス燈』
3. 『ハムレット』

b0189364_22315356.jpg 今年は個人的にいろいろあったため、映画もドラマも少なめで選択肢自体が少ない。映画のベストは古い名画ばかりで、「ベスト」とするには面白味がないかも知れない。ただ映画については特にここ数年個人的に古典指向であるため、こういうラインナップになったのも当然と言えば当然なのかも知れない。
 『素晴らしき哉、人生!』は、アメリカ的な非常に理想主義的というか楽天的というか脳天気というか、そういう映画であるが、善意や正義感に溢れていて気持ちの良い映画である。SF的な要素もあり、スリリングな展開もありで、なおかつ心温まる映画である。
 『ガス燈』は、打って変わって人の悪意に溢れたサスペンス映画で、全編非常にスリリング。イングリッド・バーグマン、シャルル・ボワイエ、ジョセフ・コットンらの演技も光る。
 『ハムレット』は、シェークスピアの有名な戯曲を映画化したものだが、シェークスピア劇の魅力を存分に伝える見事な映画化が光る。さすがに舞台人のローレンス・オリヴィエが手がけた映画と感じる。

今年見たドラマ・ベスト3(23本)
1. 『日曜劇場 ああ!新世界』
2. 『日曜劇場 ひとり』
3. 『星ひとつの夜』

b0189364_9384248.jpg 今年は倉本聰の日曜劇場がCS(日本映画専門チャンネル)で大量に放送されたため、今年見たドラマの半分が倉本版日曜劇場になった。新作ドラマは一部話題作もあったが、どれもパッとせず、ドラマとしてはグレードが低い。『漱石悶々』はデキは良かったが、それでも全盛期の倉本ドラマには及ばない。倉本作品の中でも『ああ!新世界』と『ひとり』は、どちらも同じような回想形式のドラマだが、主人公の心情があふれ出ていて、小品ではあるが非常にレベルが高い。埋もれさせておくのがもったいない作品で、どうしてこれまであまり再放送されていなかったのか不思議なくらいである(僕の知る限りでは再放送は皆無である)。今回それを発掘してまとめて放送した日本映画専門チャンネルの見識の高さには頭が下がる。(電波を独占している)他の大放送局にも見習ってほしいものである。
 『星ひとつの夜』も同じチャンネルで放送された山田太一作品で、完成度が非常に高く、山田作品らしいセリフの面白さ、キャストの面白さが随所にあふれる名品である。新しいドラマもこういうドラマの水準に少しでも近づいてほしいと思うが、残念ながら年々レベルが落ちているような気がしている。

今年読んだ本ベスト5(64冊)
1. 『成人病の真実』
2. 『大往生したけりゃ医療とかかわるな』
3. 『ニッポンのサイズ 身体ではかる尺貫法』
4. 『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年』
5. 『「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔』
番外. 『三国志』

b0189364_21275820.jpg 今年は個人的な事情から医療関係の本を多く読むことになった。中でも近藤誠の本はどれも素晴らしいものだった。視点が新しい上、どれも説得力があり、しかも読みやすい。ほとんどハズレがないと言って良い。中でも『成人病の真実』は、目からウロコの事実が目白押しで、近藤誠の著書の中でもピカイチと言って良いんじゃないかと思う。この本で紹介されている事実は、少なくとも成人病検診を受けるすべての日本人が知っておくべきことである。残念ながら、ほとんどの日本人はまったく知らないまま、無駄で有害な検診を受け続けている。そこのあなた、是非、この本をお読みください! 同じ著者の『日本は世界一の「医療被曝」大国』も非常に面白かった。
 『大往生したけりゃ医療とかかわるな』もなかなか痛烈な医療本。著者の中村仁一も近藤誠と非常に近い考え方をする人で、医学界では異端である。しかし彼の主張もきわめて明解ではなはだユニーク。死について考えることで生を見つめ直すという態度に大きな共感を覚える。
 『ニッポンのサイズ 身体ではかる尺貫法』は、石川英輔の大江戸シリーズの1冊。石川英輔の大江戸シリーズはその初期から読み続けており、もはや僕にとっては珍しくないかと思っていたが、まだまだ江戸ネタは出てくる。江戸の伝統が測定単位という形で現代にも生きていて、伝統的な測定単位に意外な合理性があるということもよくわかる。江戸時代はまったく侮りがたいということが身にしみる。ここでは取り上げなかったが、同じ著者の『実見 江戸の暮らし』も非常に面白い本で、特に江戸の時刻と貨幣について非常に勉強になった。
b0189364_8122249.jpg 『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年』は山田太一のエッセイだが、著者の自作に関する見方が、種明かし的で面白いだけでなく、テレビ創生期の有り様というものも伝わってくる。この時代を経験した人間にしか書けないことが多数紹介されて非常に新鮮である。
 『「A」 マスコミが報道しなかったオウムの素顔』は、映画『A』の撮影過程を書いた本で、映画と重なる部分も多いが、撮影側の心の葛藤まで描かれていて、映画以上にいろいろ考えさせられる。ただし映画を見てから読んだ方が一層面白かったのではないかとは思う。映画『A』を当面見ることができないのではないかと思って(実際『A』はなかなか出回っていない)本を先に読んだんだが、あに図らんや意外にも身近な図書館にあって見ることができたのは今考えると良かったのか悪かったのかよくわからない(良かったんだろうけど)。
 番外は、今年全編読み切った横山光輝のマンガ版『三国志』。今さら評価するようなものでもないし、大変な労作であることは疑いない。前にも書いたが「日本遺産」と呼んでも良いほどの作品である。

今年見たドキュメンタリー・ベスト5(88本)
1. 『ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々』
2. 『日本人は何をめざしてきたのか (6)』
3. 『武器ではなく命の水を』
4. 『新・映像の世紀 第4集』
5. 『パナマ文書 “史上最大のリーク” 追跡の記録』

b0189364_738498.jpg 今年も、見たドキュメンタリーは比較的多かった。何を選ぶかいろいろ悩むくらいだが、なかなか良いラインナップではないかと自負している。
 『ワイルドジャパン 魔法にかけられた島々』は、BBCが製作した自然ドキュメンタリーで、日本の自然が題材になっている。そのため割とよく見かける映像が多いが、少し引いた位置からあらためて見てみると、日本の自然はかなり面白い。人間と動物との関係もユニークである。そういう部分には普段はなかなか気が付かないが、日本の自然美も含めて、こういう風にあらためて提示されると、意外な発見があって面白い。見せ方も非常にうまく、これが見られたのは収穫だったと思わせる1本。
 『日本人は何をめざしてきたのか (6)』は、日本の障害者福祉の戦後史を紹介するETV特集である。このシリーズは、さまざまな視点から戦後史を切り取るもので、女性環境の視点で作られたものも非常に面白かったが、この障害者福祉史は特に考えさせられる部分が多かった。高度成長期の、一般人の障害者に対する差別的な姿勢にも驚かされたほどで、それを考えると日本での社会的弱者に対する感覚も少しずつではあるが改善しているのかと感じたのだった。
b0189364_8401646.jpg 『武器ではなく命の水を』は、アフガニスタンで活動する医師、中村哲の来し方を紹介するETV特集。ちょっとした劇映画みたいな話で非常に感動的である。
 『新・映像の世紀 第4集』は、昨年から今年にかけて放送された『新・映像の世紀』シリーズの1本で、戦後冷戦期に米ソ政府が何をしてきたかが明らかにされていて、このシリーズの中では出色であった。同じシリーズの第6集もよくできた1本で、タイトルの「新・映像の世紀」が何を意味するかがよくわかる、1本主張が通ったドキュメンタリーだった。
 『パナマ文書 “史上最大のリーク” 追跡の記録』は、タックスヘイブンの現状を赤裸々に伝える告発ドキュメンタリー。ペーパーカンパニーの簡単な作り方まで紹介されていて、タックスヘイブンを取り巻く状況がよくわかる、実に明解なドキュメンタリーである。
 他にも、『人種隔離バスへの抵抗』『暴かれる王国 サウジアラビア』などが秀作で大変勉強になった。また『もうひとつのショパンコンクール』も非常にユニークなドキュメンタリーで、もしかしたらNHK、これからシリーズ化するのかという予感がある。いずれにしても今年のドキュメンタリーは非常に豊作であった。

 というところで、今年も終了です。今年も1年、お世話になりました。また来年もときどき立ち寄ってやってください。
 ではよいお年をお迎えください。

参考:
竹林軒出張所『2009年ベスト』
竹林軒出張所『2010年ベスト』
竹林軒出張所『2011年ベスト(映画、ドラマ編)』
竹林軒出張所『2011年ベスト(本、ドキュメンタリー編)』
竹林軒出張所『原発を知るための本、ドキュメンタリー2011年版』
竹林軒出張所『2012年ベスト』
竹林軒出張所『2013年ベスト』
竹林軒出張所『2014年ベスト』
竹林軒出張所『2015年ベスト』
by chikurinken | 2016-12-31 09:02 | ベスト
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