日曜劇場 田園交響楽(1972年・北海道放送)
演出:守分寿男
原作:アンドレ・ジッド
脚本:倉本聰
音楽:冨田勲
出演:木村功、仁科明子、山本亘、久我美子、下条正巳
音楽が特に目を引くドラマ アンドレ・ジッドの『田園交響楽』を翻案したドラマらしい。『田園交響楽』自体読んだことがないのでよく分からないが、原作にかなり近い話のようだ。
盲目の少女(仁科明子)が手術を受けて、視力を取り戻すところから話が始まる。彼女の育ての親である牧師(木村功)と妻(久我美子)、息子(山本亘)は、視力を回復した少女を温かく迎えるはずだったが、牧師が少女に抱いていた恋愛感情が視力回復をきっかけとして家族の間で明らかになったため、嫉妬やなんやかんやで家族の間にややこしい問題が起こるというストーリー。
ストーリー自体はやや大げさで芝居がかっていて、個人的にはあまり好みではないが、1時間ドラマとして考えるとなかなか意欲的な作品ではある。音楽は冨田勲が担当しており、後の同氏の作品
『シンセサイザー 惑星』を思わせるようなシンセサイザー音楽が随所に散りばめられていて、こちらも非常に意欲的である。当時冨田はシンセサイザーを購入したばかりで、(このドラマの製作年である)1972年という年はおそらく実際に音楽製作にシンセサイザーを使用できるようになって間もない頃ではないかと思う。冨田勲がシンセサイザー音楽の第一人者であり、彼のごく初期のシンセサイザー作品が使用されたドラマであることを考えると、このドラマは現代音楽史の視点から見ても貴重である。また他に岡林信康の「私たちの望むものは」が随所に流されていて、こちらも目を引く。地味だが、あちこちに見所があるドラマである。ただしやはりストーリー展開は作りすぎの感じがして、あまりいただけない。もっともこれは原作に由来するもののようだが。
★★★☆参考:
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