日曜劇場 風船のあがる時(1972年・北海道放送)
脚本:倉本聰
演出:守分寿男
音楽:坂田晃一
出演:フランキー堺、高橋昌也、南田洋子、原知佐子、大滝秀治
札幌オリンピック5日前の慌ただしくも懐かしい風景ネタバレ注意! 1972年、札幌オリンピックを5日後に控えた札幌での話。主人公は、札幌オリンピックの開会式で1万個の風船を一斉に上げる役割を仰せつかった市役所の職員(フランキー堺)。元来小心者で完璧主義者であるため、失敗したらどうしようと考えると夜も寝られず、心配の種が尽きない。この男には美人の奥さん(南田洋子)がいるが、この男が結婚記念日を忘れしかも仕事にかかりっきりであることから、少しすねて昔の恋人(高橋昌也)と不倫しようなどと突発的に考える。結局はその元恋人に諭されて何事も起こらないが、同時に夫の真摯さにも気付かされることになる。夫の方も、あるきっかけで、仕事に追い回されている自分の姿を比較的客観的に見られるようになり、学生の頃の志を思い出す。こうして夫婦の危機は回避されたが、翌日になると、夫は再び風船の仕事に追い回され走り回るのであった……というようなストーリー。
このドラマの面白いところは、放送されたのが札幌オリンピック開会の4日前ということで、まさにリアルタイム・ドラマである。また画面にさりげなく出てくる当時の事物、たとえば魔法瓶、けたたましい音で鳴る電話、電話のカバーなんかがあの時代を思い出させる。挿入される音楽も由紀さおりの「生きがい」だったりトワ・エ・モアの「虹と雪のバラード」だったりで懐かしい。もっとも「虹と雪のバラード」は札幌オリンピックのテーマ曲なので、このドラマで流されること自体はまったく自然である。
ドラマとしてはこぢんまりとまとまっていて、緊張感なく見られる。オリンピック直前ということで、どこかお祭りの前みたいな、あるいは正月前夜の「紅白歌合戦」や「ゆく年来る年」みたいな穏やかな雰囲気も漂う。ふんだんに映し出される札幌の当時の街並み風景もどこか「ゆく年来る年」を彷彿させる。
音楽担当は坂田晃一で、テーマ曲は1時間単発ドラマと思えないほど素晴らしい曲である。何かの機会に是非CD化していただきたいものである。
1972年日本民間放送連盟賞優秀賞受賞
★★★☆参考:
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