日曜劇場 ひとり(1976年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
出演:船越英二、大原麗子、山内明
さすが倉本聰、まったく侮れない![『日曜劇場 ひとり』(ドラマ)_b0189364_730204.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/16/64/b0189364_730204.jpg)
国鉄を早期退職することになった主人公がイワナ釣りに行くという、それ自体なんということもないストーリー。最初から最後までイワナ釣りのシーンが続き、その間に、彼の仕事、会社との関係、周辺で起こったことなどが回想形式であぶり出されていく。回想形式といってもほとんどが秘書課のある女性(いわゆるお局様的な人で「キツネ」というあだ名が付いている)との会話で、この会話を通じて主人公のあれやこれやが判明していくというもの。登場人物は、主人公の男(船越英二)、キツネ(大原麗子)、主人公のイメージに登場する死んだ兄(山内明)の3人だけ(他に若干のエキストラ)で、独白劇のようですらある。1時間ドラマであるが内容は濃厚。北海道の森の中が舞台で、いつヒグマが出てくるかわからない状況であるため、魚釣りのシーンで終始するが割合スリリングである。
これも短編小説のような味わいがある非常に意欲的な作で、さすが倉本聰、まったく侮れない。またこのようなドラマを製作する余裕が放送局にあったこと、このようなドラマを放送する枠がテレビにあったことなども今考えると驚きである。「東芝日曜劇場」は玉石混交で、ごく普通のホームドラマもあれば、何やらやけに意欲的な作品もある。また物足りない作品も割にある(
竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』を参照)。
![『日曜劇場 ひとり』(ドラマ)_b0189364_729517.jpg](https://pds.exblog.jp/pds/1/201612/16/64/b0189364_729517.jpg)
ただこういうハイグレードなものがさりげなく放送され、しかもあまり話題になっていないところに「日曜劇場」の魅力があったのかとも思う。もう一本似たようなテイストの倉本作品に
『ああ! 新世界』というドラマがある。これはかつて放送時に見て記憶に残っている作品で、こちらも近いうちに見る予定だが(先日、日本映画専門チャンネルで放送された)、似たような回想形式のドラマだったと記憶している。こういう作品はCSでもかまわないのでどんどん放送してほしいと思う。埋もらせておくのはもったいない。
★★★★参考:
竹林軒出張所『日曜劇場 ああ!新世界(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 聖夜(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 りんりんと(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 幻の町(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 ばんえい(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 風船のあがる時(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 田園交響楽(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 遠い絵本 第一部、第二部(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 うちのホンカン(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 時計(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 遅れてきたサンタ(ドラマ)』竹林軒出張所『日曜劇場 スパイスの秋(ドラマ)』竹林軒出張所『聞き書き 倉本聰 ドラマ人生(本)』竹林軒出張所『100年インタビュー 倉本聰(ドキュメンタリー)』