日曜劇場 時計(1977年・北海道放送)
演出:守分寿男
脚本:倉本聰
出演:フランキー堺、渡瀬恒彦、桃井かおり、宮口精二
細かい部分はともかく、かなり意欲的なドラマ
これも、倉本聰が書いて北海道放送が製作した東芝日曜劇場のドラマ。日曜劇場枠だから1時間ドラマだが、内容はかなり異色で、短編小説を想起させるようなものである。相当な意欲作で、今ではこの手のドラマが作られることはまずないだろう。
明治10年の北海道開拓時代の話で、妻殺しの入植者(渡瀬恒彦)を追う別の入植者(フランキー堺)と元武士(宮口精二)という構図が柱になる。追っ手の2人が借りる宿というのが、一人で原野に住んでいる若い女(桃井かおり)の家で、ほとんどそこを舞台にしてこの4人で進行していくドラマである。追っ手の入植者は、本土に帰りたいという自分のエゴのためにかつての仲間を売り渡そうとしており、元武士の方は、本土に帰りたいという思いを抱きながらも、自身の尊厳と誇りを失わないような生き方をしている。妻殺しの入植者にも複雑な事情があるが、なぜ妻を殺したかという根底部分はよく見えてこない。その辺の理由については整合性が取れておらずやや無理がある。また原野で一人暮らししている若い女という設定もかなり無理があるような気はする。さらに時代考証がしっかりしているのか少しばかり疑問に感じたりしたが、そういう細かい部分(大事な部分ではあるが)を抜きにして考えると、先ほども言ったようになかなか作れない意欲作であることは間違いない。こういう作品を手がけたスタッフと北海道放送には敬意を払いたいと思う。キャストも、少ないが超豪華である。
★★★☆参考:
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