五年目のひとり(2016年・テレビ朝日)
演出:堀川とんこう
脚本:山田太一
出演:渡辺謙、蒔田彩珠、高橋克実、市原悦子、西畑大吾、柳葉敏郎、板谷由夏
ストーリーがよく練られた質の高いドラマ 山田太一作の新作2時間ドラマ。演出は『岸辺のアルバム』の堀川とんこう、主演は
『星ひとつの夜』の渡辺謙で、山田ドラマとしてはベストの布陣である。
内容は、
『キルトの家』や
『時は立ちどまらない』同様、震災がモチーフで、目下の山田太一のテーマなのか。ただし前2作に比べてはるかにできは良い。
主人公やその周りの人々との出会いも割合自然であり、主人公が、自分の正体をなかなか見せず周りにとってミステリアスな存在であり続けるという設定も、これまで
『深夜にようこそ』などで使われているこなれた手法である。そのためかストーリーが自然に流れる上、先がなかなか見えてこない面白さもある。また最近のドラマのように、ありきたりの表現で終始するような部分もないことから、ユニークさを感じる。そういう意味でも質の高いドラマと言える。
さらに、主人公が関わる中学生の少女(蒔田彩珠)にも存在感がある他、この兄が面白い役回り(山田作品らしい面白い登場人物:西畑大吾)で、登場人物の面白さはさすがに山田作品と思わせる部分がある。母親(板谷由夏)もやや自己中で非常にウザイ存在で、山田ドラマではちょっと異色ではあるが、これもリアルな存在感がある。
その他の部分では、市原悦子がドラマの背景や主人公の経歴などをいろいろとセリフで語るのがやや説明過剰になっていたり、中学生たちのセリフに少々違和感があったりしたが、こういうのも許容範囲で、今年の新作ドラマの中では最上位のレベルである。やっつけ仕事を見せることに慣れきっている他の作家も、この作家を見習って工夫して書いてほしいものだと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『続・山田太一のドラマ、5本』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その1(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『テレビがくれた夢 山田太一 その2(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『その時あの時の今 私記テレビドラマ50年(本)』竹林軒出張所『やがて来る日のために(ドラマ)』竹林軒出張所『星ひとつの夜(ドラマ)』竹林軒出張所『キルトの家(ドラマ)』竹林軒出張所『時は立ちどまらない(ドラマ)』竹林軒出張所『深夜にようこそ(ドラマ)』