マイルス・デイビス 帝王への扉を開けたサウンド(2011年・NHK)
NHK-BS1 巨匠たちの青の時代
マイルスは見かけによらず裕福な家の出だった 元々『巨匠たちの青の時代』というテーマで放送されたドキュメンタリーで、他にココ・シャネルやピカソのバージョンもあったような記憶があるが、はっきりしたことは憶えていない。今確認したところ、ココ・シャネルのバージョンについては見ていた(
竹林軒出張所『ココ・シャネル 閉ざされた時代に自由の翼を(ドキュメンタリー)』を参照)。マイルス・デイヴィスの番組ならば最初に放送されたときに見ていてもおかしくないと思うんだが、あいにく見逃していたようだ。今回再放送されたんでめでたく拝見ということにあいなった。
「青の時代」というタイトルから窺われるように、この番組も、マイルスの名前が上がるまでの青春時代を紹介するものである。イリノイ州の名士の家に生まれ、裕福な少年時代を送ったが、やがてトランペットと出会い、ブランスバンド部で活動するようになる。一方でクラブみたいなところにも出入りしてトランペットを吹いていた。その後、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらのビバップの洗礼を受け、彼らに近づくことを夢見、ニューヨークのジュリアード音楽院に進学。学校にはあまり行かず、チャーリー・パーカーを追いかける日々を送る。やがてチャーリー・パーカーから声がかかり、共演させてもらえるようになる。ただし当時のマイルスのトランペットの音はまったく力がなく、ディジー・ガレスピーのパワフルな音とはほど遠いものだった。失意のマイルスはやがてミュートを使った独自の細い音を出すことで自分の特色を出すことに成功し、その後、巨匠へのステップを歩んでいくことになった……というそういうドキュメンタリー。
当時マイルスの周辺にいた人物のインタビューもふんだんに盛り込まれ、また音の違いや類似点(マイルスはブレイク当初フレディ・ウェブスターというプレイヤーの音を真似していたらしい)なども具体的に紹介されるなど大変わかりやすい構成で、音楽ドキュメンタリーとしては非常によくできていた。ただし途中、マイルスの伝記映画の映像が頻繁に使われて引用されたりしており、同じ映像を使うんだったらこの番組の特色は何なのよと思ったりもした。まあトータルで面白かったんで不満はないけども。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『マイルスvsコルトレーン(本)』竹林軒出張所『コルトレーン ジャズの殉教者(本)』竹林軒出張所『死刑台のエレベーター(映画)』竹林軒出張所『輸入CDはウラシマ状態』竹林軒出張所『輸入DVDもプチ・ウラシマ』竹林軒出張所『ジャズの輸入DVD続編』竹林軒出張所『ココ・シャネル 閉ざされた時代に自由の翼を(ドキュメンタリー)』