贋作師ベルトラッチ 〜超一級のニセモノ〜
(2014年・独Fruitmarket Kultur und Medien/Tradewind Pictures他)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
わかったようなわからないような
2014年にベルトラッチという絵描きが逮捕されたらしい。「らしい」というのは真相がよくわからないためで、このドキュメンタリーで数日後に逮捕される予定と本人が語っていたから知ったという、その程度の情報である。
いずれにしてもベルトラッチという絵描きが、それまで数々の有名作家のそれらしい贋作を作ってそれを売り、それで稼いでいたというのだ。そして画廊関係者もオークションの関係者も、そして研究者でさえもそれが贋作であるということに気が付かなかったらしい。最終的にどういういきさつで明るみに出たかはわからないが、今でもこのベルトラッチの「作品」が美術館に飾られているらしいから、よくできているには違いない。そのベルトラッチの作品製作の様子などがこのドキュメンタリーで紹介されていく。
そもそも、このベルトラッチが製作している作品はほとんどが現代美術の作家であり、技巧がどうのというようなものではないため、ニセモノは割合作りやすい。その程度の美術作品をありがたがっている美術界についても僕自身はどうかと思っているんだが、技巧的に難しくなければニセモノが出回るのも当然と言えば当然で、偽物を掴まされたからと言って文句をいうのも筋が違うような気がする。この番組に登場する関係者はしきりにベルトラッチを非難していたが、専門家といわれる人々は、真贋の鑑定が仕事の一部であるのにそれができなかったんであれば自分自身の責任を問うべきではないのかなどと思ってしまう。それで結果的に誰も見破れなかったんであれば、それはもう本物ということで良いんじゃないかと思うがどうだ。
現在の美術品の多くが中身ではなくブランドだけで成り立っているという現状が、この贋作事件によって結果的に明らかになったんではないかと思うが、それにしてもベルトラッチの贋作がそんなによくできているのか、オリジナルの作品をよく知らないので皆目見当が付かないんだが、(紹介された)いくつかの贋作作品を見た限りでは、割にありふれたものばかりでそれほどのものだとは思えなかった。本人の談によるとレンブラントでもダビンチでも何でも贋作が作れるらしいが、そういう贋作作品の方を見てみたいものだと感じた(そういうものを見ると技量がわかりやすい)。しかし残念ながらこのドキュメンタリーでは現代美術以外出てこなかったので、どの程度の描写力、表現力があるのかは結局最後までわからなかった。結局、このベルトラッチ事件について知らなかった自分にとっては、いろんな点で、なんだかわかったようなわからないような番組になってしまった。
★★★参考:
竹林軒出張所『偽りのガリレオ(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『レンブラント 自画像が語る光と影(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『二枚目のモナリザの謎(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ジュラシック・キャッシュ(ドキュメンタリー)』