日本懐かし文房具大全
きだてたく著
辰巳出版
「懐かし」の代表格、それが文房具
『日本懐かし』シリーズは、
『日本懐かしオーディオ大全』をはじめ何冊か読んでみたが、その中で一番よくできていたのがこの本。何より著者が文房具に愛着を持っているのがよくわかるし、それに著者の世代だけでなく、かなり以前の時代から後の時代まで割合まんべんなく網羅して紹介している点も好感が持てる。おそらくいろいろな世代が楽しめるんではないかと思う。
著者は僕より一世代後だが、僕自身が懐かしさを感じる素材が結構あっただけでなく、後の世代が楽しんでいた文房具についても新鮮な目で見ることができた。文房具が、公然と学校に持って行けるオモチャだったという発想も面白い。
著者は「多面筆入」(表裏だけでなくいろいろな部分が開く筆入)に特に思い入れが強いようで、多面筆入は6ページに渡って紹介されている。また巻末にも、多面筆入開発者へのインタビュー記事(聞き手は著者)が掲載されており、それぞれ(作り手と使い手)の多面筆入に対する思い入れが伝わってくる。マニアの人が愛着物の話をするのは聞いていて面白いものだが、僕自身は多面筆入とはまったく縁のない世代で、多面筆入の写真、あるいは現物を見ても、著者のようにときめくことはまったくない。だがこの本で紹介されているミッキーナイフやタツヤ強力マグネットなどはドンピシャの世代で、小学校低学年時代に触れたものである。こういったものはすでに記憶の彼方にあったもので、かつての記憶がいろいろと蘇ってきた。つまりこれが「懐かし」の感慨である。
文房具には、僕もそうだが多くの人にとって特別な思い入れがあって、写真を見たりするだけでかつての想い出が蘇ってくるものである。そういう意味でも「懐かし」素材としては恰好のものであり、「日本懐かし」を代表する素材なんだろうと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『古き良きアンティーク文房具の世界(本)』竹林軒出張所『さわの文具店(本)』竹林軒出張所『日本懐かしオーディオ大全(本)』竹林軒出張所『昭和のレトロパッケージ(本)』竹林軒出張所『昭和ちびっこ広告手帳(本)』竹林軒出張所『昭和子どもブーム(本)』竹林軒出張所『ぼくらの60〜70年代宝箱(本)』