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竹林軒出張所

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『(不) 正直な私たち』(ドキュメンタリー)

(不) 正直な私たち 〜“ウソ”を巡る“本当”の話〜
(2015年・米Salty Features/ Fourth & Twenty8Films)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

予想どおりに嘘つき

『(不) 正直な私たち』(ドキュメンタリー)_b0189364_209398.jpg 『予想どおりに不合理』の行動経済学者、ダン・アリエリーがプロデューサーを務めたドキュメンタリー。アリエリーの講演が軸になって話が進められていく。
 番組のテーマは、人間がどのような状況で嘘をついたり不正を働いたりするかということである。この問に対して、自分の不正に対して言い訳が立つ状況や、周囲の環境などの条件が揃えば、人は誰でも不正に手を染めやすくなるとする。そこで実例として、インサイダー取引に手を染めたトレーダー、経歴を詐称した教育関係者、八百長に加担したNBAの元審判などが紹介される。しかもインタビュー形式で、かれら自身が経験を肉声で語るというんだから豪華。実際かれらはごく普通の倫理観を持った人々であり、特殊な人でないことはすぐにわかる。周囲の環境や状況によって不正に手を染めるようになる過程が明らかにされるため、見ている我々はそれを実感として捉えることができる。
 また人が不正を働く状況、働きにくい状況をさまざまな実験を通して明らかにしていく。結論として、誰でも人は周囲の環境のせいで不正を働きやすくなることが判明し、そういう状況を作らないことが不正を減らすための究極の手段であると主張する。
 番組は、アメリカのドキュメンタリーらしくテンポが非常に速くて、途中付いていけない箇所がいくつかあった。それでも実例や実験がかなり具体的にわかりやすく紹介されているため、親切で真摯なドキュメンタリーと言える。ここで紹介されている話はある程度これまで本を通じて知っていたことではあるが、今回、映像によってより身近なものとして感じることができた。つまり、映像表現が活字に勝るメリットを十分活かした番組になっていたというわけ。さすが、アリエリーが関わったドキュメンタリーである。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『予想どおりに不合理 増補版(本)』
竹林軒出張所『不合理だからうまくいく(本)』
竹林軒出張所『人が悪魔に変わる時 史上最悪の心理学実験(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『行動経済学まんが ヘンテコノミクス(本)』
竹林軒出張所『暴力の人類史(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『なぜ仕事がツライのか(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2016-09-07 20:10 | ドキュメンタリー
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