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竹林軒出張所

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『青年の海 四人の通信教育生たち』(映画)

青年の海 四人の通信教育生たち
(1966年・小川プロダクション)
監督:小川紳介
撮影:奥村祐治
ドキュメンタリー

自主映画レベル

『青年の海 四人の通信教育生たち』(映画)_b0189364_811184.jpg ドキュメンタリー映画作家、小川紳介率いる小川プロダクションの全作品がDVD化されることになった。その第一弾として発売されたのがこの『青年の海』で、小川紳介のデビュー作である。
 この映画が撮影された少し前に、当時の文部省が大学の通信教育課程をそれまでの4年制から5年制に変えるという案が出された。それに対する学生たちの反対運動を追うという形式の映画で、それ以後の小川紳介の映画を予感させるような内容である。
 運動を率先して展開していく通信教育学生4人(慶應3人、法政1人)に焦点を当てて、経過を辿っていくんだが、映像素材があまり整理されておらず、8mmで撮った素材を単に並べてみましたというような仕上がりで、正直言って鑑賞に堪えない。当時の学生運動の例に漏れず、学生同士の間でいろいろと議論が展開されていくんだが、一体誰と誰の間で議論が行われているのかも見ていてよくわからない。(通信課程でない)一般の学部学生と議論しているようなシーンもあるんだが、相手が誰なのかは最後まで分からない。また運動がどのように展開していったかも分からなければ、その後どうなったかもまったく見えてこない。結果的に作り手の自己満足で終始しており、残念ながら自主映画のレベルを超えていない。人に見せるような代物ではないということである。
 小川プロダクションの映画をDVD化するというのは素晴らしい企画だと思うが、もう少しタイトルを厳選しても良いんじゃないかとも思う。小川プロの関係者である土本典昭の『ある機関助士』も絶版中だし、小川紳介が助監督を務めたという『わが愛 北海道』もいまだDVD化されていない。順序としてはこちらの方が先なんじゃないかという気がしないでもない。もちろんいろいろ事情はあるだろうが。そういう意味で「DVD化した」という点以外まったく評価できないとても残念な映画であった。
★☆

参考:
YIDFFニュース「小川プロダクション全作品DVD化プロジェクト始動」
竹林軒出張所『クリーン・センター訪問記(映画)』
竹林軒出張所『わが愛 北海道(映画)』
竹林軒出張所『ある機関助士(映画)』
竹林軒出張所『六ヶ所村ラプソディー(映画)』
by chikurinken | 2016-06-28 08:02 | 映画
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