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竹林軒出張所

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『北朝鮮“機密ファイル”』(ドキュメンタリー)

北朝鮮“機密ファイル” 知られざる国家の内幕(2016年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

北朝鮮のこれからを占う……ただし少々バイアス入り

『北朝鮮“機密ファイル”』(ドキュメンタリー)_b0189364_22203963.jpg 北朝鮮軍部の有力者(情報担当)と目される人物から、あるUSBメモリが日本の専門家にもたらされた。このUSBメモリを解析したところ、北朝鮮政府内の大量の文書が含まれており、機密度がかなり高い「機密ファイル」もあった。このファイルの分析を通じて、現在の北朝鮮の状況をあぶり出そうと試みようというのが、このドキュメンタリーである。
 金正日が死に現在の金正恩体制になってから政府内部で不穏な動きがあり、一方で金正恩自身、現行政府が転覆されるのではないかという危機感を抱いていることから、政府内で相次ぐ粛正が行われてきた。また海外の情報が入ることで市民が(現政権の悪行に)目覚めることを恐れ、海外の流入データを所持、あるいは閲覧した人間を公開裁判で処罰するなどということも日常的に行われている。こういった粛正や締め付けのせいもあり、政府の中枢にいる人間が国外に逃亡するという事件が立て続けに起こっている。このUSBメモリをもたらした人物もそういった高官の1人ではないかというのがこの番組の主張である。
 この番組では終始、金正恩体制が危機的であるということを強調していて、政権崩壊も間近みたいな論調であったが、機密データによってあぶり出された現状(この番組で紹介されたもの)にはあまり目新しいものはなく、粛正や締め付けが厳しくなった話は以前もNHKスペシャルかなんかで放送されていた。比較的新しい情報と言えば、金正恩がかなり焦っているという話と「核武装こそ北朝鮮が生き残るための道だ」という主張ぐらいのものだが、これについてもそれほど新鮮さはない。
 金正恩体制が危機的であるというのは、金正恩が就任して以来あちこちで再三言われていて、そうかも知れないがすぐにどうこうなることはないんじゃないかと個人的に感じているため、この番組で北朝鮮の危機的状況をあまりに強調しているのは少々眉唾に感じる。むしろ番組がこういう雰囲気を煽っているような印象すら受ける。製作者側が考える「こうだったらいいのにな」という状況を真実であるかのように伝えるのは決して褒められたもんじゃないなと思いながら見ていた。もちろん本当のところは僕にも分からないが、少なくともこの番組については話半分で聞いておいた方が良いような気がする。
★★★

参考:
竹林軒出張所『金正日 隠された戦争(本)』
竹林軒出張所『北朝鮮 “帰国事業” 60年後の証言(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『わたしは金正男を殺してない(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『NEXT WORLD 私たちの未来(ドキュメンタリー)』

by chikurinken | 2016-06-13 07:19 | ドキュメンタリー
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