受験脳の作り方
脳科学で考える効率的学習法
池谷裕二著
新潮文庫
池谷版「受験勉強のコツ」
脳科学の裏付け付き
著者は脳の研究者で、(中高生向けの)読みやすい脳の本を多数書いている。この本もそうした著作の1つで、元々高校生向けだった本を文庫化にあたり一般向けに改訂したということである。
この本のベースとなるのは、受験勉強にあたり効率的で有効な勉強方法は何かというのを紹介していき、それに対し脳科学的な根拠を示すというアプローチ。内容自体は(僕にとっては)目新しいことはないが、中高生にとっては良いガイドになるんじゃないかという気がする。それにたとえ目新しくなくても、こうやってわかりやすくきっちり(受験生向けに)書いておくこと自体に価値がある。すごい本とは思わないが、それなりに価値があると思える。
内容は割合雑多で、以下のようなことが書かれている。
● 脳への入力は脳内の海馬領域に一時的に蓄えられ、重要性の高いものから脳内に蓄積される(長期記憶)ため、記憶を蓄えるための有効な方法は、繰り返し脳に入力すること(反復)によってそれが重要な事がらであることを海馬に誤解させることである。
● 好奇心が長期記憶を促進させる。
● 空腹時、あるいは歩行時に脳内でシータ波が出て、記憶力が増す。
● 記憶は睡眠時に定着するため、睡眠が非常に大切。
● 全体像を把握してから細部に進むのが良い学習方法である。
● 記憶には(原始的な順に)方法記憶、知識記憶、経験記憶がある。丸暗記は知識記憶だが、知識記憶より論理や理屈で憶える、つまり方法記憶の方が、他のさまざまなことに応用できるため有利である。学習というものは究極的には方法記憶を求めるものである。
等々。最後の方法記憶が有効であるという論には、個人的に同意する。ただしそれが分かっていてもなかなか実践するのは難しいというのが世の常で、教育者にはそのあたりをうまく指導してほしいものだと思う。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『快感回路(本)』竹林軒出張所『エロティシズム(本)』竹林軒『大学受験ラジオ講座回顧』