FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学
ジョー・ナヴァロ、マーヴィン・カーリンズ著、
西田美緒子訳
河出文庫
「人間ウソ発見器」でも
ウソは見破れない
かつて「人間ウソ発見器」という異名を取った元FBI捜査官、ジョー・ナヴァロが説くボディ・ランゲージの判読法。
生き物は自分の身に危険を感じたとき、本能的に「固まる(Freeze)」、「逃げる(Flight)」、「戦う(Fight)」(3つのF)のいずれかの対応をするようプログラムされている。人間も同様で、そのためストレスを感じる状況では、この3つの行動の現れとして身体にその表現(ノンバーバル行動)が表れるという。これは原始的な脳である大脳辺縁系(「爬虫類脳」とも呼ばれる)によって指令されるもので、人はこのような行動によって、身を守ったりストレスを緩和しようとしたりするというのである。したがって人のそのような行動を観察することで、その人がどういう精神状態でいるかが読めることがあるというのが著者の主張である。
本書では代表的なものについて写真入りで解説しており、非常にわかりやすくなっている。また、それぞれの行動が「3つのF」とどのように関連しているかまで言及されているため、記憶に残りやすい。こういう点が、同様のボディ・ランゲージの本より優れた点である。また著者自身の過去の経験が「エピソード」という形で随時紹介されており、具体例を通じて理解しやすくなるよう配慮されていると感じる。この辺も非常に親切である。
ただし、かつて「人間ウソ発見器」という異名を取った著者にしても、人がウソをついているかどうか見破ることは不可能であると語っている。著者によると、ボディ・ランゲージを読み取ることで我々にできることは、相手がストレスを感じているかどうかであり、ウソかどうか判別したければそれに基づいて適確な質問を繰り返すなどの工夫が必要で、それでも結局のところウソの判別は可能性の域を出ないということなのである。こういった謙虚な態度は他のボディ・ランゲージ関連本にはあまり見られないもので好感が持てるだけでなく、かえって本書の信頼性も高くする結果になっている。とは言っても、本書で紹介されている一部の解説についてはにわかに賛同できないものもある。彼我の文化の違いなども考慮しなければならないのかも知れないし、少なくとも読む我々にしても「これが絶対だ」などという思い込みを排除して謙虚な態度で臨むことが肝要なんだろうと思う。そういう点もこの本を通じて学ぶことができる。
★★★☆
参考:
竹林軒出張所『FBI美術捜査官 奪われた名画を追え(本)』