典子50歳いま、伝えたい
映画「典子は、今」あれから30年
白井のり子著
光文社知恵の森文庫
『典子は、今』の「典子」は今 『典子は、今』の主役を演じたサリドマイド被害者、辻典子さん、現在、白井のり子という名前になっているが、その「典子」が自身の半生について綴った自伝エッセイ。
サリドマイド禍のために腕と手がない状態で成長した著者だが、普通小学校から中学校を経、やがて公立高校も卒業して、その後、高校の先生たちの尽力もあり熊本市役所に就職。就職してすぐ、映画会社から映画出演の話が持ち込まれ、公務員としての籍を置いたまま、本人をモデルにした映画『典子は、今』に出演して、全国的にその名を知られるようになる。ただそのため、観光客が市役所に押し寄せたりして大変なことになり、著者は公の場に出ることを拒むようになった。
その後、結婚し、2人の子どもに恵まれるが、44歳のときに市役所を退職する。かねてより引き合いが来ていた講演会活動に集中するためである。本書執筆時、全国で講演会活動を繰り返し精力的に活動している模様。いまだに『典子は、今』で彼女を知った人々が多く、講演会の依頼も多いという。
手が不自由でも普通に生活しており、車だって運転できるわけで、障害者だからといってむしろ特殊な見方をしないでほしいというのが彼女の本音らしい。そういう内面も本書から窺うことができる。
僕自身も若い頃『典子は、今』を見ており、個人的には、主人公の「典子」が今どういう生活を送られているのか気になっていたが、元気にご活躍の様子が窺えて良かったと思う。本自体は平易で、内容も非常に興味深いため、すぐに読み終えることができる。なお著者には
『典子44歳 いま、伝えたい 「典子は、今」あれから25年』という著書もあるが、本書、つまり『典子50歳いま、伝えたい』はこの『典子44歳』に加筆して看板を付け替えたものらしく、内容はほぼ同じと考えても良さそうである(ただし未確認)。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『典子は、今(映画)』竹林軒出張所『薬禍の歳月 サリドマイド事件・50年(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『五体不満足 完全版(本)』竹林軒出張所『四肢奮迅(本)』竹林軒出張所『人体と機械の融合を求めて(ドキュメンタリー)』