お墓のゆくえ 〜弔いの社会史〜
(2016年・NHK)
NHK-Eテレ ETV特集
墓には社会のありようが
刻み込まれている 都心では墓地がなかなか手に入らないが、地方では墓が無縁化してうち捨てられるような状況が起こっている。墓地は足りているのか足りていないのか一見したところよくわからないが、実はそこに人口動態の変化が反映されているのだ……というような内容のドキュメンタリー。
つまり、戦後日本の家族制度がかつてのような家を中心とした大家族から核家族に移行し、しかも都市への人口集中が起こったため、地方において家単位で守られてきた墓が守れなくなったこと、そしてさらに都市の核家族の新しい墓が都市部に必要になったことがこういう結果をもたらしているということらしい。つまり人口動態の変化が如実に反映されているのが墓地だということなのだ。
こういった墓地の問題についても、この人口動態に合わせて変化しなければ対応できないというのがこの番組の主張で、今まで埋葬や墓地提供を取り仕切ってきた寺の側に変化が必要になっている現実も紹介される。
他に、平安時代の死者の取り扱い方や鎌倉新仏教が葬儀に関わるようになったこと、江戸時代の寺請制度によって寺が葬儀一切を取り仕切るようになったことなども紹介される。そのため全体的に新書みたいな内容だったが、問題点が適確にあぶり出されており、しかも時代に応じて墓のあり方を変えていくべきという明確な主張があって実に明解である。もしかしたらこの内容を焼き直して新書にするなどということが行われるかも知れない。この番組の「弔いの社会史」という副題も新書のタイトルみたいだ。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『葬式仏教の誕生 中世の仏教革命(本)』竹林軒出張所『葬式は、要らない(本)』