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竹林軒出張所

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『リハビリの結果と責任』(本)

リハビリの結果と責任 ― 絶望につぐ絶望、そして再生へ
池ノ上寛太著
三輪書店

お粗末なリハビリと偉大な障害受容

『リハビリの結果と責任』(本)_b0189364_1953931.jpg 遣り手のビジネスマンだった著者が、交通事故で障害を負う。急性期病院、リハビリ病院などを転々としながらも、一向に身体の状態が改善することもなく、両手両足が不自由な状態を余儀なくされる。それにもかかわらず、病院の医師、看護師、さまざまな療法士らはまともな対応をせず、リハビリもおざなりで、著者は彼らに対する不信感を募らせる。
 こういった病院への入院が3回続いた後(つまり3箇所の病院で問題があったということ)、最後に辿り着いた病院がしっかりしたところで、そこで出会った医師、看護師、療法士らのおかげで、著者は現実と向き合うことができるようになって、最終的に障害を受容することができ、これからの人生を謳歌しようと決意するに至る。
 この本では、多くの病院でいかにいい加減な治療やリハビリ、介護が行われているかが経験に基づいて記述され、それを告発する内容になっている。紹介される事例はどれもひどいと思わせるもので、このような病院とは関わり合いになりたくないと思わせるものがある。もちろん最終的に辿り着いた病院は、本当の意味で正しい医療、治療を行っていたわけで、すべての病院がひどいわけではないのは言うまでもない。だがそうは言うものの、やはりいくつかの病院でおざなりな対応がなされているのも確かである。この本は2009年に出たもので今は若干改善が見られるかも知れないが、いろいろな話は僕自身も耳にする。患者は自分の全人生をかけてリハビリに取り組むのであるから、療法士や看護師、医師はそれなりの覚悟で向き合ってもらいたいと、患者側の立場からは考える。
 途中、著者がビジネスマンとして活躍していたときの記述がかなり出てくる。確かに最後の「障害受容」の観点から必要な記述であることは分かるが、これほど詳細に書く必要があったのかは疑問。リハビリの記述の途中に章単位でこういう話(ちょっと自慢話めいた印象あり)が挿入されるため、話の腰が折られるような印象を受けて、全体の構成から考えるとかえって逆効果なんじゃないかなと感じる。ちなみに僕は、一旦こういう部分を省略して読み通し、最後にその部分に戻って読んだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『脳がよみがえる 脳卒中・リハビリ革命(本)』
竹林軒出張所『脳から見たリハビリ治療(本)』
竹林軒出張所『新しいリハビリテーション(本)』
竹林軒出張所『奇跡の脳(本)』
竹林軒出張所『壊れた脳 生存する知(本)』
by chikurinken | 2016-05-02 07:04 |
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