第三の男(1949年・英)
監督:キャロル・リード
原作:グレアム・グリーン
脚本:グレアム・グリーン
撮影:ロバート・クラスカー
出演:ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・ヴァリ、トレヴァー・ハワード、バーナード・リー
映像表現の見本市 言わずと知れた名作映画。戦後映画の代表作と言っても良い。歴代映画のベストテンなんかをやると必ず上位に来る作品である。僕もこれまで2回見ているが、最初はあまり感慨がなかったにもかかわらず、見るたびに新しい発見があり、面白さが分かる。今回は特に映像面に目が行った。影を効果的に使ったシーンや光と陰のコントラストを強調したシーンは有名であるが、他にも傾いた映像がやたら出てくるのも今回かなり目に付いた。映画の文法書によると、こういった映像は見ている側を落ち着かなくさせることからサスペンスの表現でよく使われるという話を聞いたことがあるが、そういう効果があるのかはよく分からない(少なくとも僕は感じなかった)。
またリズミカルに展開するスピード感も心地よい。ストーリーがどんどん展開していくめくるめく感覚は、編集の素晴らしさを実感させる。
サスペンスを煽ってストンと落とすようなシナリオも実に良い。謎の男の実態がなかなか見えてこないプロットも実にうまい。また、アントン・カラスのチターの音楽も素晴らしい。最初に見たときはあまり合っていないんじゃないかと思っていたが、ぴったり合っているわけではないが、随所に主張が感じられる。音楽には監督のキャロル・リードが積極的に関わっているという話を聞いたことがある(
『滅びのチター師』が原作のNHKのラジオドラマが元ネタ。ちなみにこのドラマではリードを小池朝雄、カラスを西村晃が演じていた。
竹林軒出張所『チターはもう歌わない(ラジオドラマ)』を参照)が、音楽で映像を活かそうという作り手の意図が伺われる。ホントに映像表現の見本市みたいな映画で、もう一度見るとおそらくまた新しい面白さが見つかるんじゃないかと思わせる映画である。
★★★★参考:
竹林軒出張所『滅びのチター師(本)』竹林軒出張所『チターはもう歌わない(ラジオドラマ)』竹林軒出張所『黒い罠(映画)』竹林軒出張所『わが命つきるとも(映画)』竹林軒出張所『独立時計師たちの小宇宙(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『模倣品社会(ドキュメンタリー)』