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竹林軒出張所

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『銃社会アメリカ ある牧師の挑戦』(ドキュメンタリー)

銃社会アメリカ ある牧師の挑戦
(2015年・米Purple Mickey Productions)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー

アメリカ人の三大信仰
キリスト教、金、銃


『銃社会アメリカ ある牧師の挑戦』(ドキュメンタリー)_b0189364_23284993.jpg アメリカの保守層の人々にとっての2大スローガンは「銃所持の権利」と「中絶反対」であるそうだ。保守的であることで知られるキリスト教福音派のロバート牧師もその一人で、「中絶反対」の一大キャンペーンを展開していた。ところがこの運動の際に、中絶手術を行っていた医師が銃で殺されるという事件が起こり、これが彼に考え直させる機会を与えた。彼が「中絶反対」のキャンペーンを行っていたのは、人(胎児)の命を救うためだと思っていたが、そのキャンペーンが結局は人の命を奪うことに繋がったわけだ。こうして保守派の人々が訴える「銃所持の権利」に疑問を抱くことになる。
 「銃所持の権利」を訴える人々は、悪者から自分を守る権利があるとして、銃所持は当然の権利だとする。しかしこれは、悪者であれば射殺しても良いという論理であり、キリスト教的な考え方とまったく矛盾すると彼は考えた。こうして彼は「銃所持の権利」を否定する立場に立つことになる。しかし、彼の論理は保守的な福音派の人々には受け入れられない。「銃所持の権利」を強く主張する人々は非常に多く、それに異議を唱えることは立場的にも非常に厳しいわけである。それでもロバート牧師は、自らの信念を曲げずに活動を続けている……という内容のドキュメンタリーである。
 我々の感覚からいくと、自分にとって不都合な人間(つまり「悪者」)は射殺して良いという考え方に正当性があるとは到底考えられず、「銃所持の権利」を認めるなどという発想もまったく理解できない。実際アメリカでは銃がはびこっているせいで、普通の国には起こり得ないような大量殺人事件が頻繁に起こっているわけで、外部の人間であれば「いい加減気がつけよ」と思う。外の人間にしてみれば、銃への信仰は狂信的だとしか思えない。
 銃規制の問題については、たとえば『ボウリング・フォー・コロンバイン』(竹林軒出張所『華氏119(映画)』を参照)など、これまでさまざまなドキュメンタリーでも訴えられているし、オバマ大統領も銃規制の重要性について訴えている(反対が強いのでろくな政策がうてていないが)。こういったドキュメンタリーを通じて、アメリカ人にも「銃所持の権利」についてしっかり考えてもらいたいもんだが、利己主義的な銃信者がその信仰を改めることはなさそうだ。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『“銃社会”アメリカの分断(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『子どもに広がる銃社会(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史 (8)〜(10)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『華氏119(映画)』

by chikurinken | 2016-02-24 07:27 | ドキュメンタリー
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