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竹林軒出張所

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『チュニジア民主化は守れるのか』(ドキュメンタリー)

チュニジア民主化は守れるのか 〜ノーベル平和賞と民間団体の苦闘〜
(2015年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE

勝ち取るもの、それが民主主義

『チュニジア民主化は守れるのか』(ドキュメンタリー)_b0189364_814263.jpg アフリカのチュニジアでは、民主革命(いわゆる「ジャスミン革命」)で独裁政権が倒されたが、その後、それまで抑圧されていたイスラム勢力が力を伸ばし、2012年の制憲議会選挙ではイスラム政党が第1党になった。
 ところが、伝統的なイスラム回帰を主導するこのような勢力と従来のフランス的民主主義を望む勢力(「世俗派」と呼ばれる)の間で対立が起こり、やがて内戦の危機まで孕むようになってきた。
 こういう状況で、さまざまな勢力から代表が集まって結成されたのが「国民対話カルテット」であり、彼らは対立する勢力の間で和解を促す活動を積極的に行い、結果的に一触即発の危機は回避されることになった。多元主義、民主主義の原則に基づき、物事を話し合いで平和的に解決していくといういわば大同団結主義である。このような功績が評価されて、この「国民対話カルテット」は2015年にノーベル平和賞を受賞した。
 これと並行して、彼らの活動に賛同する学生たち(「シビル・ソシエティ」)も独自の活動で民主化を進めている。たとえば議員の勤務評定(議会への出席率などを基に算出)をつけて発表したり、議会の様子をネットでリアルタイムに中継したり、あるいは議会で不正があった場合はそれを告発したりという活動を行うことで、政治の透明性を担保しようとしている(かれらの活動は広く国民に支持されている)。
 脅かされる民主主義を懸命に守ろうとする人々と、彼らの活動によって民主主義が拡大していく様子を見ると、民主主義というものは勝ち取り守っていかなければならないものであるということがあらためて実感される。チュニジアの国内情勢については、経済の悪化やイスラム原理主義者の介入など、依然として予断を許さない状況ではあるが、人々の理知的かつ冷静なこうした活動を目にすると、アラブ社会における民主主義のモデルケースになることが予想される。民主主義について考える上でいろいろと示唆に富むドキュメンタリーであった。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『“アラブの春”が乗っ取られる?(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ネットが革命を起こした(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2016-01-17 08:14 | ドキュメンタリー
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