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竹林軒出張所

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『秋日和』(映画)

秋日和(1960年・松竹)
監督:小津安二郎
原作:里見弴
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄
音楽:斎藤高順
出演:原節子、司葉子、岡田茉莉子、佐分利信、北竜二、中村伸郎、佐田啓二、笠智衆、沢村貞子、三宅邦子、桑野みゆき、三上真一郎

少し下品な小津映画

『秋日和』(映画)_b0189364_8164245.jpg 『秋日和』も見るのは今回3回目だが、今回はリマスター版ということで少々期待があった。実際はリマスターして良くなったという印象は、この映画についてはあまりなかった。
 そもそもこの話自体、お節介が過ぎるという印象が強く、しかも少し前に作られた『彼岸花』によく似た嫁入り話で、1949年の『晩春』をそのまま焼き直したという印象さえある。もちろん、岡田茉莉子演ずる「佐々木百合子」という強烈なキャラクターが出たり、あるいは司葉子がバカに美しかったりするという特徴はあるんだが、マンネリのイメージがこの映画については特に強い。小津自身、前年にはちょっと毛色の違った『お早よう』を撮ったり、あるいは大映や東宝でも撮ったりしているんでマンネリ打破を望んでいたのかも知れないが、結局のところ、松竹ではマンネリを踏襲して「豆腐屋は豆腐屋に」徹底しようとしたということだろうか。そのあたりの詳細はよくわからないが、この映画については、単にマンネリであるだけでなく、デキが良くないとも感じる。
 それに加えて、小津映画常連の悪友たちが未亡人の品定めをしたり、いつものおふざけが少々品がなかったりする点もマイナスである。小津映画らしい上品さに欠けているため、登場人物たちのブルジョアの嫌らしさみたいなものが鼻につく。それに、特に前半なんだが、セリフとセリフの間が悪いという感じもした。悪友3人(佐分利信、北竜二、中村伸郎)の家庭がすべて出てきたのもこの映画が初めてなんじゃないかと思う。そのため過剰に説明的になってしまい、戦後の小津映画が持つ詩的な味わいみたいなものが欠けている。小津の信奉者が小津映画をまねて作った駄作みたいな印象すら漂う。小津映画らしい良い部分もあるにはあるんだが、小津映画としては駄作の部類に入るんじゃないかと思う。残念。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『彼岸花(映画)』
竹林軒出張所『浮草(映画)』
竹林軒出張所『お早よう(映画)』
竹林軒出張所『秋刀魚の味(映画)』
竹林軒出張所『麥秋(映画)』
竹林軒出張所『大学は出たけれど(映画)』
竹林軒出張所『小津安二郎・没後50年 隠された視線(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『デジタル・リマスターでよみがえる名作(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『絢爛たる影絵 小津安二郎(本)』
竹林軒出張所『青春放課後(ドラマ)』

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 以下、以前のブログで紹介した『秋日和』のレビュー記事。

(2005年12月2日の記事より)
『秋日和』(映画)_b0189364_8161082.jpg秋日和(1960年・松竹)
監督:小津安二郎
原作:里見弴
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
出演:原節子、司葉子、岡田茉莉子、佐田啓二、佐分利信、中村伸郎、北竜二、笠智衆、沢村貞子、三宅邦子、渡辺文雄、三上真一郎、高橋とよ

 小津安二郎おなじみの嫁入りばなし。原作ものであるせいか、猥談ひとつ取ってみても下品でいただけない(「ヘッドシザースはないだろ」と思ったよ)。大道具や調度、衣装などは、相変わらず素晴らしいが……。全体的に「作り物」の感じが非常に強くわざとらしさを少し感じた(小津映画は大体「作り物」の感じが強いが、わざとらしさを感じることはあまりない)。場面展開も少しわざとらしいような……。まとまりに欠けていたせいか?
 岡田茉莉子演じる「佐々木百合子」は、なかなか面白い突き抜けたキャラクターで、この話に花を添えていた。
★★★
by chikurinken | 2015-12-18 08:17 | 映画
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