シリコンバレー その知られざる顔(2014年・仏CAPA Presse)
NHK-BS1 BS世界のドキュメンタリー
"特権"神授説を信奉する困った人々
シリコンバレーの世界的企業、Google、Facebook、Appleなどが、閉鎖的で独善的なコミュニティを築きながらも、地域に一切貢献しておらず、それどころか地域のコミュニティに混乱を来している実態を告発する。
こういった世界企業の従業員は破格の好待遇を受けていることから、現在周辺地域の賃貸価格が高騰しており(こういう借り手が高い賃貸料の物件でも次々に借りていくため)、今まで住んでいた住民が家主から追い立てを食らう例が増えているという。異常なまでの高騰のせいで、普通の生活をしている普通の人々は、通勤に便利な地域に住めなくなっている。
またこれらの企業は、税金を地域に納めて収益を還元するということもやらない。グローバル企業が巧妙に税金逃れをしているのは有名な話だが、こういった企業はどこも満足な法人税を払っていない。しかも中には自治体に支払われるべき従業員の所得税まで免除を要求するような企業まであり、これが他の企業に伝染している。結果的に地域の行政機関は、域内に大企業を抱えるにもかかわらず、そこからの税金が得られなくなる。
一方で、こういった企業は、公共バス・レーンで自前の(社員専用の)路線バスを走らせたりもしており、これが通常の交通機関の運行に支障を来しているということまで起こっている。こういった企業の社員たちは、まさしく特権階級のように振る舞っており、このようなこと一切が、地域住民の反発を買っている。しかも彼らは、マスコミとは一切連絡を絶っており、こうした問題に対して説明も弁明もしないという。
企業イメージが良いため消費者は彼らの商品を喜んで利用しているが、その実態は、自分の儲けばかり追求する利己的な悪徳企業で、地域には災厄をもたらすばかり。中には、完全に国として独立して税金のないコミュニティを作るべきだなどという関係者もいる。それもまた良いと思うが、税金なしでどうやってそのコミュニティを維持するつもりなのかはよくわからない。実際コミュニティを運営するためには金がかかるわけだし、言ってみれば彼らは、これまで築き上げられた地域コミュニティのシステムにただ乗りしているわけだ。たまたまうまくいって成功しただけなのにそれに対して周囲の社会に感謝の念を持たないばかりか、人の財産を平気で奪って、迷惑をかけていることにも気付いていないわけだ。しかも自分たちが一方的に有利になるようなシステムまで作ろうとしている。
いずれにしろ我々は、こうした面を理解した上で、消費活動を行わなければならないというのがこのドキュメンタリーの主張である。実際のところ、IT産業にはほとんど不要と思えるようなものも多いわけで、そういうものは敬遠するに限る。一見便利だからといって飛びついたところで、自分にとっても社会にとっても良いことなんかあまりない。むしろ害悪の方が多いとあらためて感じた。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『EU 租税回避1兆ユーロとの闘い(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『"新富裕層" vs. 国家 〜富をめぐる攻防〜(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『魂の退社(本)』