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竹林軒出張所

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『日本語の教室』(本)

日本語の教室
大野晋著
岩波新書

いろいろな意味で
大野晋を俯瞰する


b0189364_7522991.jpg 国語学者、大野晋が、編集者から出された国語学関連の質問に答えていくという体裁の本。結果的に、大野のこれまでの研究を網羅的に紹介する内容になっている。質問に対する回答という形式になっているため、読みやすさにも配慮されているのか、話し言葉に近く読みやすい。
 二部構成になっており、第一部が「さまざまな質問に答えて」、第二部が「日本語と日本の文明、その過去と将来」というタイトルでまとめられている。前半部は日本語文法についての解説や、著者のライフワークであるタミル語研究(日本語の源流がタミル語であるとする説)が紹介されていて、僕にとってはタミル語研究が目新しく興味深かった。こちらについては『日本語の起源』という本で紹介されているが、いずれ読んでみるつもり。かなり異色の説であるため「トンデモ」であるみたいな言説もあるようだが、面白そうではある。検討に値すると思う。
 後半部は打って変わって文明論に終始する。太平洋戦争敗戦直後、日本で漢字撤廃運動が起こったなどの話は興味深いが、現在の知性低下の源流がこのあたりにある(当用漢字の数の制限)とする説はちょっと同意できない。ほとんどが決めつけであり、どれも根拠が薄い。都合の良い素材ばかり集めて作り上げた独断的な言説で、飲み屋の席で保守派オヤジが一説ぶっているような印象がある。とうてい学者の説とは思えないような話で、少なくともこういった学術的な本で披露すべきではなかったと思う。大野晋氏は、実際に接した歴史家の古田武彦によると「下町のべらんめぇオヤジ」だということだったが、その辺が窺われるような内容で、こういう部分は話半分、話三分の一で読み飛ばせばよろしい。ただ、著者の価値を下げる結果になるのではないかと老婆心ながら危惧してしまうのである。
★★★

参考:
竹林軒出張所『日本語の起源(本)』
竹林軒出張所『日本語の文法を考える(本)』
竹林軒出張所『古典文法質問箱(本)』
by chikurinken | 2015-10-21 07:53 |
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