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竹林軒出張所

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『映像の世紀 第5集〜第8集』(ドキュメンタリー)

デジタルリマスター版 映像の世紀 第5集〜第8集(1995年・NHK)
NHK-BS1 NHKスペシャル

b0189364_8454926.jpg映像はまったくもって容赦ない

 デジタルリマスター『映像の世紀』の第5集から第8集。
 第5集「世界は地獄を見た」は、映像を通じて第二次世界大戦を俯瞰する。このシリーズは、まさにこの「俯瞰」という言葉がピッタリおさまり、歴史を俯瞰するかのような構成、言ってみれば教科書的なドキュメンタリーになっている。第二次大戦時の戦闘の映像は、比較的出回っているためあまり稀少な感じはないが、ファシズムの台頭から戦線拡大、同盟軍の崩壊までがていねいに描かれる。ドイツ軍の強制収容所の映像なども出てきてすさまじい。処刑シーンも出てくる。映像はまったくもって容赦ない。いろいろと考えさせられる。またドイツ軍が始めた無差別爆撃が、のちに連合軍に引き継がれ、それがために民間人が大量に殺された戦争であったということが強調される。
 第6集「独立の旗の下に」は中盤のハイライトで、独立の英雄の若い頃の映像が多数出る。前回紹介したように、マハトマ・ガンジー、ホー・チ・ミン、毛沢東、周恩来が出るのがこの回で、なかなか新鮮である。ベトナム情勢については、元々対仏独立戦争だったものにアメリカが介入するあたりまでが描かれて、第7集以降のテーマに続くのだろうと予感させる。インド情勢と中国情勢に時間が割かれていたが、これもその後の歴史を見ると妥当な線で、やはり構成が非常にしっかりしていると感じさせる。
b0189364_8464298.jpg 次の第7集「勝者の世界分割」は、第二次大戦末期から、大戦後の世界。米ソ対立から東西冷戦に至る過程である。米ソの軍備拡張競争とその犠牲になる周辺国の様子が映像で示される。このあたりの戦後史は現在の世界の状況とそのまま結びついているという印象がどことなくあるが、実際は、力を持つ国が武力で小国を蹂躙する構図がはっきりと現れており、スターリン主義はナチスと大して変わらず、アメリカも18世紀の絶対王政を彷彿させる。小国でもある程度その意志が尊重され、民族自決が正義と考えられている70年代以降とは様相が異なることがわかる。言ってみれば弱肉強食の世界が依然として存続しているわけで、日本の北方領土問題もそのあたりにルーツがある。また、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領の無責任な利己主義的政策が戦後の混乱を招いたかのような表現があって、こちらも新鮮であった。このシリーズでは、政治家は概ね利己的でありそのために多くの民衆が犠牲になるという描き方が多く、少し醒めた見方が、歴史を客観的に俯瞰しようという意図を感じさせ心地良い。
 第8集は冷戦時代で、ベルリンの壁がソビエトによって作られるまでの過程を追う。全体を通じてソ連のフルシチョフ首相の視点から迫っていくというのも斬新である。米ソが互いをよく知らないために相手に対する恐怖感が増幅していき全面核戦争の危機を招いたという視点も放送当時としては斬新だったような記憶がある。ともかくこのシリーズは、「後世から見た歴史の総括」という考え方が全編を貫いていて、臨場感のある映像を交えながら淡々と語っていくという方法論がすばらしく、現代史の総括として貴重なドキュメントになっている。その点をあらためて評価したいと思う。
★★★★

参考:
NHK BSオンライン『「映像の世紀」デジタルリマスター版 放送決定のお知らせ』
竹林軒出張所『映像の世紀 第1集〜第4集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第9集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『映像の世紀 第10集〜第11集(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ヒトラー 権力掌握への道(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『カラーでみる太平洋戦争(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『よみがえる“ワルシャワ蜂起”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『家族と側近が語る周恩来 (1)(2)(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『シリーズ毛沢東(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『『フルシチョフ アメリカを行く(ドキュメンタリー)』
by chikurinken | 2015-10-13 08:48 | ドキュメンタリー
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