激変する中国の製造業
〜アパレルの街で何が起きているのか〜
(2015年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE
かつての日本のように
産業の空洞化に邁進するのか 中国のアパレル産業の近年の動向を描くドキュメンタリー。
「世界の工場」などと言われ、世界中から製造を委託されている中国だが、しかしそれは何も中国に特殊な技術があるためではなく、単に大量の労働力を安く調達できるからに過ぎない。一方で独自の技術なども育っているわけではなさそうで、賃金が高騰すればいずれは(かつての米国や日本と同様)中国からも製造業が大量に海外に流出するんではないかと思っていたが、いよいよそれが本格化したのではというのがこのドキュメンタリーからうかがわれる。
このドキュメンタリーで紹介されるのは、日本からの受注で成長したアパレル下請工場であるが、日本からの受注は減るわ、円安のせいで値引き圧力は強まるわ、労働者からの賃上げ要求は高まるわで、いよいよ存続の危機を迎える。このあたりはかつての日本の下請工場と同様で、発注元、ひいては消費者の自己中心主義炸裂という感じで、中国企業とは言え同情を禁じ得ない。
そういう状況で当然思い付くのは、賃金の安い第三国への工場移転ということで、この番組に出て来た工場はカンボジアへの移転に踏み切る。このあたりはかつての日本の状況とまったく同じ。ただしカンボジアでしっかり縫製作業ができるかというとそう簡単には行かず、早急に優れた作業員を育てなければならないというジレンマが生じてくる。このあたりもかつての日本の状況と同じ。一方で、中国工場で働いていた熟練のベテラン労働者の首切りもやらなければならなくなるということで、経営者の悩みは尽きない。
結局のところ価格で勝負する製品は、どこで誰が作っても大して違いはないわけで、そういう部分で生きてきた業者は再考を迫られることになるわけだ。僕としては、良いものであればどこで誰が作っていてもかまわないんだが、この20年ほど質の悪い中国製品ばかりが日本の市場に蔓延してきてうんざり気味だったため、以前のように日本製が普通に出回ってくれれば(少なくとも選べるようになれば)うれしい。同時に「安ければ良い」という値段ばかりを追求する消費者の志向にもうんざりしている。少なくとも自分の消費活動くらいはしっかりしようと思っているのだ。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『中国製ばっかし』竹林軒出張所『だまされて。 涙のメイド・イン・チャイナ(本)』竹林軒出張所『破綻する影の銀行(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ジャパンブランド(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『中国“経済失速”の真実(ドキュメンタリー)』