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竹林軒出張所

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『罪と罰』(映画)

罪と罰(1970年・ソ連)
監督:レフ・クリジャーノフ
原作:フョードル・ドストエフスキー
脚本:ニコライ・フィグロフスキー、レフ・クリジャーノフ
撮影:ビャチェスラフ・シュムスキー
出演:ゲオルギー・タラトルキン、タチアナ・ベードワ、ヴィクトリア・フョードロワ、アレクサンドル・パブロウ

『罪と罰』(映画)_b0189364_8335333.jpg『罪と罰』の決定版

 ドストエフスキーの『罪と罰』の映画化作品。原作も長いが、この映画も前後編あわせて3時間40分という大作である。
 小説を読んでいるだけだとどうしても当時の風俗がわからなかったりするが、映画ではその点しっかり情景として表現されているのでそういう曖昧さはない。ただ原作が名作であるということになるとどの程度原作の内容が反映されているかどうしても気になるところで、なるべくなら原作に忠実に作っていただきたいと思う。内容が改変されていれば、映画経由でその原作に触れることにメリットはない。むしろ変な先入観が吹き込まれただけまずいということになる。
 その点、この映画は原作にかなり忠実に作られていて、原作の雰囲気もうまく再現されている。なんと言ってもキャスティングが絶妙で、ラスコーリニコフもソーニャも判事もこれ以上ないくらい原作のイメージと合っている。原作のまだるっこしさや暗さもよく再現されている。そのため映画を見ていると、原作と同じようないらだたしさや気分の悪さまで感じてくる。また一方で当時の風俗や街並みの再現も絶妙である。金もかかっているようで、70年代のソ連映画の力を感じることができる。
 なにしろ当時の下層階級の貧困がこれでもかというくらい描かれ、自然主義の作品かと見まがうばかりだが、それもこれも時代の再現性が高いためであると納得できる。おそらく『罪と罰』の決定版と言っても良い作品なのではないかと思う(他の映画は見ていないが)。
★★★★

参考:
竹林軒出張所『原作と映画の間』
竹林軒出張所『カラマーゾフの兄弟(映画)』
竹林軒出張所『居酒屋(映画)』
竹林軒出張所『ゴリオ爺さん(映画)』
竹林軒出張所『令嬢ジュリー(映画)』
竹林軒出張所『赤と黒(映画)』
竹林軒出張所『プライドと偏見(映画)』
竹林軒出張所『ジェイン・エア(映画)』
by chikurinken | 2015-08-29 08:34 | 映画
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