働く子供たちは守れるのか 〜ボリビア 新・児童法の挑戦〜
(2015年・NHK)
NHK-BS1 ドキュメンタリーWAVE
何が正しいかは
現場を見ないとわからない
南米のボリビアで、10歳以上の子どもたちが労働力として認められるという法が制定された。すべての子どもたちが学校に通えるようにするため児童労働を排除し、労働者の最低年齢を引き上げるというのが世界の潮流で、それに真っ向から反対するかのような法律であるため、ILO(国際労働機関)でもこれが問題視される。
だがこれについて詳細に検討してみると、何も「子どもも学校に通わずに働け」というような法律でないことがわかる。ボリビア国内でも元々最低年齢を引き上げる方向で政策を進めていたが、現実に存在する児童労働者がむしろ正規労働者として認められず不当な扱いを受けているという現状があり、それに対する処置として現実的な政策を取ったというのが実情であった。
このようなボリビア政府の政策を反映するかのように、ボリビア国内では、児童から搾取する企業に対して行政が圧力をかけ、児童に正当な賃金を支払い、学校に行かせるよう迫っている。同時に、児童労働者たちがユニオンを作って不当な雇い主と渡り合う手助けもしているというのだからその先進性には驚かされる。むしろ建前を捨て、こういう現実路線を取ったボリビア政府にこそ、児童労働について語る資格があるというものだが、そんな実情に一向に配慮しないILO総会の場では、ボリビア政府に対する非難決議が採択されるのだった。ボリビアの児童労働者たちは一方で、このようなILO決議に反対するデモを行うという、まことに歪んだ構造がある。
国際機関の建前と現実の政策が対照的で、現場を知らない企業トップの独断専行と同じような構造がここにあって、そういう点で非常に興味深い。誰のための何のためのスローガン、政策なのか、常に注視していかなければならないことを思い知らされる事例であった。今後もボリビアの(先進的な)児童労働政策に注目していきたいところである。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『瓦と砂金 働く子供たちの13年後(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『甘いチョコレート 苦い現実(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『スラムのオーケストラ(ドキュメンタリー)』