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竹林軒出張所

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『あの日、僕らは戦場で』(ドキュメンタリー)

アニメドキュメント あの日、僕らは戦場で 〜少年兵の告白〜
(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル

悪い大人は子どもを利用する

『あの日、僕らは戦場で』(ドキュメンタリー)_b0189364_1293518.jpg 太平洋戦争末期、沖縄決戦を迎えるにあたり、日本軍は「護郷隊」というゲリラ組織を作り米軍上陸に備えた。この作戦を計画したのは、陸軍中野学校の将校だが、この組織、その構成員は13歳から17歳の少年少女たち、つまり少年兵である。
 沖縄の子どもたちのところにある日突然名護に来いという呼び出しがかかり、作業の徴用か(この頃滑走路を作る作業などに駆り出されていた)などと思って行ってみるといきなり過酷な訓練を強いられる。殴る蹴るは言うまでもなく、中には日本刀で脅迫されることまである。あげくに帰りたければ帰って良いが、帰ったらハガキ一枚だ(死刑宣告)などと脅しをかけられる。毎日訓練をこなすうちに、ものごとの分別がつかなくなり、殺戮マシンとして仕立て上げられていく。
 いよいよ米軍が沖縄に上陸してくると、ゲリラ部隊として戦場に投入される。少年兵たちは、地元の子どもだと思って親切にしてくれた米兵に攻撃を加えたり、自分の故郷が戦場になったため故郷を焼き払うように命令されたり、あるいは戦友が死んだりなどという、異常な経験をしていく。
 この番組では、かつてこういう経験をした元少年兵から話を聞き、それを元に当時の状況をアニメで再現する。アニメ化しているので当時の状況がわかりやすい。上官の目が描かれておらず恐ろしげなのも子ども目線が表現されていて良い。
 内戦状態のアフリカや原理主義がはびこる中東で、少年を兵士として使うという話はよく聞くが、70年前に日本でもやっていたということは、実は今回初めて知った。しかもゲリラ戦で駒のように良いように使われていたという点では、アフリカの少年兵士や中東の自爆テロリストと同じである。この護郷隊の少年たちも強制的にかり集められ(これも一部の右翼連中は「強制」ではなく「自分の意志」だなどと言い張るのかも知れないが)、人格を無視して非道なことが行われ、強制的に殺戮の場に投入されたわけだ。身勝手な人間が、弱い立場の人間を好き勝手に利用するというのは、戦争、戦闘のあらゆる場面で見受けられる。身勝手な連中をのさばらせる(同時に彼らの身勝手な行動が正当化される)世の中というものが、どれだけ一般人に苦しみと不幸をもたらすかがよくわかるというものである。こういう悲劇を自分のこととして考え、しっかり反省することこそ、平和な世界を生きる我々に求められているのではないかと考える。
★★★☆

参考:
竹林軒出張所『少年テロリストたちの“夜明け”(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『“駅の子”の闘い(ドキュメンタリー)』
竹林軒出張所『ちむぐりさ 菜の花の沖縄日記(映画)』

by chikurinken | 2015-08-19 12:10 | ドキュメンタリー
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