カラーでみる太平洋戦争 〜3年8か月・日本人の記録〜
(2005年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル
太平洋戦争限定のカラー化企画 『カラーでよみがえる東京』や
『カラーでよみがえる第一次世界大戦』と同じような企画で、要するに過去のモノクロ映像をカラー化して、現代的なリアリティを持たせようという試みである。今回カラー化されたのは、太平洋戦争中の日本全国の映像で、特攻で飛び立つ人々、米軍に焼き払われる沖縄、焼け野原にたたずむ日本人などの映像が、カラー化でよりリアルな質感に生まれ変わる。
モノクロ映像だとどうしても時代的に疎遠な印象がつきまとうのだがカラー化するとこの時間的な隔たりが一挙に縮まるような感覚になる。それが映像カラー化の大きなメリットなんだが、特に戦時中の日本の映像ということになると、当時の空気もより一層身近に感じられるようになる。
この番組では開戦から時系列で紹介されていくんだが、1943年頃まで比較的平穏だった銃後(要するに国内情勢)が、学徒動員あたりからだんだん不穏になってきて、44年になると少しずつ米軍から爆撃を喰らうようになり平穏さを欠いていく。45年の東京無差別爆撃に至っては、まさに戦場の様相を呈してきて、もはや銃後と言って済ますことができなくなる。
このように比較的平穏な国内の映像から焼け野原の映像までが紹介され、そこに当時の人々が書いた手記が挿入されるという演出で、これもなかなか良い効果を出している。手記は、一般の人々以外に、あの水木しげるセンセイや愛川欽也のものまで含まれている。このあたりの演出は『カラーでよみがえる東京』とも共通で、マンネリと見る向きもあるかも知れないが、映像自体に説得力と価値があるため、たとえワンパターンであっても、このような企画には大きな価値があるというものである。これからも是非続けていってほしいと切に思う。
特に印象的だったのは敗戦後の日本各地の映像で、方々の大都市が廃墟になっているのに、空襲を受けなかった京都の街並みが従来どおりだったという部分である(市民が平常どおりの生活を送っていた)。これを見ると、空襲さえなければ全国の文化財も今以上に残っていたはずと考えてしまう。実際、空襲で国宝の建物も燃えているわけで、あの戦争で失ったものの大きさにあらためて気付くのである。もっともこの戦争では100万人以上の日本人の生命も失っているわけで、こちらの方が大きいのには違いない。戦争は大変な散在であるということをあらためて実感するのだった。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『カラーでよみがえる東京(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『終戦直後の日本(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『1942 大日本帝国の分岐点(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『1943 国家総力戦の真実(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『映像の世紀プレミアム 21(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『戦前・戦争(本)』竹林軒出張所『ドラマ 東京裁判 (1)〜(4)(ドラマ)』竹林軒出張所『カラーでよみがえる第一次世界大戦(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『ヒトラー 権力掌握への道(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『コミック昭和史 第1巻、第3巻、第4巻(本)』竹林軒出張所『総員玉砕せよ!(本)』