きのこ雲の下で何が起きていたのか(2015年・NHK、仏F5)
NHK総合 NHKスペシャル
核兵器のリアリティ
1945年8月6日、広島に原爆が落とされた後爆心地付近で何が起こっていたかを、写真と証言を元にして再現しようというドキュメンタリー。
長い間、爆心地の様子は生存者の証言以外に知る術がなかったが、当日の11時頃に爆心地から約2kmの御幸橋で撮影された写真があることがその後わかった。写真は2枚で広島の新聞記者が撮影したものだが、さまざまないきさつで表に現れることがなかった。その写真が少し前に公開され、それに伴い写真の詳細な解析が始まった。爆心地を中心とする2kmは当時火の海だったということで、この御幸橋は、そこからなんとか逃げ延びた人が小休止を取っていた現場だったという。
その後、この写真に写っている人の何人かが今も健在であることがわかり、当時の状況を聞き出すことができた。そしてその証言と写真の詳細な解析から、この御幸橋がどんな有様だったかを推測するというのが、この番組の主旨である。
写真を詳細に解析してみると、あちこちに横たわっている人が大勢いる他、立っている人々もひどいケロイドを負っているのがわかる。中には皮膚がベロンと剥けて腕から垂れている人もいる(らしい)。子どもを抱えた女性もいるが、当時そばにいた証言者によると、子どもは黒焦げになっていて、抱いた女性は「目を覚まして」と連呼していたという。写真とリンクさせることで証言者の語りもリアリティを持って響いてくる。
番組では、こういった情報を総合して、最終的に写真から当時の状況を再現する動画を作っている。動画としての質はそれほど高くないが、当時の惨状を伝えるという役割は十分に果たしている。
日本でも広島のことを知らない世代が増えていると言うし、アメリカでもいまだに原爆投下を正当化する人々が多いらしい。是非この番組をアメリカの地上波で全国放送して、ディスイズ核兵器というメッセージを伝えてほしいと思う。なおこの番組、フランスのF5という放送局と共同製作ということなんで、フランスでは放送されるのではないかと思われる。
★★★☆参考:
竹林軒出張所『ひろしま(映画)』竹林軒出張所『忘れられた“ひろしま”(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『もうひとつのアメリカ史 (1)〜(4)(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『決断なき原爆投下(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『二十四時間の情事(映画)』