特攻 〜なぜ拡大したのか〜(2015年・NHK)
NHK総合 NHKスペシャル
作戦と言うにはあまりに稚拙
太平洋戦争末期に日本軍が「作戦」として採用した玉砕戦法、特攻について再検討するドキュメンタリー。
先日見た古いドラマ(
竹林軒出張所『遺族(ドラマ)』参照)では、特攻は当初、わずかに島に残された日本軍が敵の上陸を少しでも遅らせるため(そして味方の支援を待つため)、空母の滑走路を破壊するため(結果的に敵の飛行機が飛べないようにするため)に採用した一時的な作戦だったということが明らかにされていたが、それについてはこのドキュメンタリーでは触れられていなかった。
この番組では、特攻作戦がとにかく1944年に始まって、それが特に再検討されることもなく、海軍と陸軍の「作戦」として組み込まれていったいきさつが紹介される。数千人の犠牲者を生み出したが、戦果自体は大して上がらず、ほとんどの航空兵は討ち死にしていた。だが上層部は成果を水増し発表して、これが特攻作戦に拍車をかける結果になったということらしい。
戦争の最終盤になると、特攻で使う飛行機もなくなり、しまいには練習用複葉機(!)に爆弾を積んで敵に突っ込んでこいというような命令まで出される。第二次大戦で複葉機を「作戦」として使おうというのもあきれ果ててしまうが、愚かしい連中が権力を持つと何をやるかわかったもんじゃないという実例である。
番組では、特攻隊の生き残りの人々の証言もあるが、ほとんどの人が高齢で、おそらくこの類の証言は今後集められなくなるだろうと思う。戦争の証言番組も最終盤にかかってきた感がある。
蝉しぐれ 戦は遠くなりにけり
★★★参考:
竹林軒出張所『1944 絶望の空の下で(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『遺族(ドラマ)』竹林軒出張所『100年インタビュー 脚本家 山田太一(ドキュメンタリー)』竹林軒出張所『栄光の旗(ドラマ)』