五線譜のラブレター(2004年・米)
監督:アーウィン・ウィンクラー
脚本:ジェイ・コックス
音楽:コール・ポーター
出演:ケヴィン・クライン、アシュレイ・ジャッド、ジョナサン・プライス、ケヴィン・マクナリー、サンドラ・ネルソン
「You'd be So Nice」の心情が
よくわかった 20世紀アメリカの音楽家、コール・ポーターの伝記映画。コール・ポーターの伝記映画と言えば、ポーターの生前に作られた
『夜も昼も』などというものもある。この映画にも『夜も昼も』の映像が出てきて、主人公のコールが妻のリンダとこの映画についてコメントする遊びの場面がある。ちなみに「夜も昼も(Night and Day)」というのはコール・ポーターの(おそらく一番)有名なナンバーのタイトルである。
さて、こちらの『五線譜のラブレター』、基本線は伝記映画であるが、死期が近い主人公が自分の人生のダイジェストを劇場で見るというスタイルになっていて、随分趣向を凝らしている。しかも全編ミュージカル仕立てになっていて、ミュージカル作家だったコール・ポーターにふさわしいと言えば確かにそうだが、大して効果が上がっていないという言い方もできる。ミュージカル好きなアメリカ人ならば楽しめるのかも知れないが、僕は2時間見続けるのが少し苦痛だった。
コール・ポーターの数々のナンバーが劇中で披露され、しかも結構名のある歌手が歌っているが(と言っても僕にはナタリー・コール以外はわからなかったが)、そもそもコール・ポーターのナンバーにしても、ミュージカルファンやジャズファン以外にはそれほど日本で知られているわけではないので、どの曲もあまり感慨が湧かない。それにポーターの曲は多くが似たり寄ったりで、詞についてもダジャレのような韻ばかりである。そういう点でポーターの曲を見直すきっかけにはなった。
コール・ポーターが同性愛者で、結婚後も愛人を作って遊び続けていたため、妻のリンダとの関係もギクシャクしてくるという展開が、このテの映画としては少々目新しいかも知れない。確かにこういう関係なら、いつまでも待ってくれる妻は男の方から見ると「You'd be So Nice to Come Home to」(あなたは、戻るところとして最高)という意味がよくわかってくる。ちなみに「You'd be So Nice to Come Home to」というのはコール・ポーターの有名なナンバーだが、この映画では採用されていない。2人の関係をよく表現できていると思うがなぜ使われなかったのかは不明。
使われている曲については「Everytime We Say Goodbye」が良い場面で使われていたりして少々ホロリとしたが、全編物足りなさを感じる退屈な映画になってしまった。もっともハリウッド製の伝記映画は概ねそうなんだが。
★★★参考:
竹林軒出張所『夜も昼も(映画)』竹林軒出張所『グレン・ミラー物語(映画)』竹林軒出張所『ジャズ・ミー・ブルース(映画)』竹林軒出張所『別れの曲(映画)』竹林軒出張所『マーラー 君に捧げるアダージョ(映画)』竹林軒出張所『ラフマニノフ ある愛の調べ(映画)』竹林軒出張所『チャイコフスキー(映画)』